個性派集団を機能させる唯一無二の戦略家――クロースは何がすごいのか。「貢献度が分かりにいが...【現地発コラム】

2024年04月01日 エル・パイス紙

忍耐力を発揮するクロースは異彩を放っている

34歳になっていまも衰え知らずなクロース。(C)Getty Images

 サッカーにおいて怒りが頂点に達するのは通常、ラスト数分間の、絶望的な状況に追い込まれて戦術を忘れ、自暴自棄になって相手ゴールに迫る時だ。しかし、それはあくまで例外的な精神状態だ。激怒モードで90分通してプレーすることはできない。

 実際、サッカーの歴史は、忍耐が怒りよりもはるかに効果的であることを示している。スペインサッカーが"フリア(怒り)"と混同されていた時代には、国際レベルでのリスペクトも、確固とした結果も得ることができなかった。冷静なパス回しで試合を支配しながら、知的に攻撃を加速させるスタイルを体現して、スペインは世界のお手本となった。

 その点、レアル・マドリーにはヴィニシウスのスプリント、ロドリゴの繊細なステップ、ベリンガムの獰猛さと繊細さを持ち合わせたスペクタクル、ブラヒム・ディアスの精神的、肉体的な敏捷性と攻撃を加速させるためのリソースが豊富にある。

 加えて、遅かれ早かれブレイクするだろうチュアメニの圧倒的なプレゼンス、バルベルデの精力的な動き、カマビンガのダイナミズム、モドリッチのエモーションと中盤にはエネルギッシュな選手が揃っている。
 
 ただだからこそ、忍耐力を発揮するクロースは異彩を放っているともいえる。1970年代に名を成したアルゼンチン人CB、ロベルト・ペルフーモは「サッカーは身体的思考だ」とよく言っていた。もしその言葉の通りなら、クロースは脳から足にレクチャーする比類なき神経ネットワークを持っていることになる。

 プレーの端々から感じられる相手に不快感を与えることのない上品な誇りと自信もその賜物だ。まるでピッチが自分のものであるかのように、太古の昔からそこに住んでいるかのように、ピッチを動き回る。

 各ゾーンが要求するもの、誰も侵入しないスペース、ボールが収まる相手の守備網の穴を見極めながら、ボールを失うことはほぼなく、常に行き先、スピード、意図を的確に選択してプレーする。そう、洗練されたサッカーという芽が、エレガントかつ正確なテクニックから息吹いているように。
【動画】ヴィニシウスがクラシコで圧巻のハットトリック

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