連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】背中で敵を圧倒する21歳 鹿島のカイオが見せた強烈な存在感

2016年04月03日 熊崎敬

圧巻だったのが、武岡を背負ってのプレー。

試合を支配する存在感を身につけつつあるカイオ。そのプレーから目が離せない。 (C) SOCCER DIGEST

 引き分けに終わった序盤戦の上位対決、内容では鹿島が終始、ホームの川崎を圧倒した。
 
 後半、土居が相次ぐチャンスを外しただけに、鹿島としては勝点2を失った気分だろう。だが結果はともかく、昨季途中の石井監督の就任以降、彼らは充実の一途をたどっている。
 
 鹿島の好調を支えるもの、それは両サイドのコンビネーションだ。右は遠藤と西、左はカイオと山本。このふたりに2トップの金崎、赤﨑が絡み、敵がいやがるサイドの深いところを突いていく。
 
 この強烈かつ狡猾なサイドアタックは川崎戦でも機能したが、中でも目を引いたのがカイオである。
 27分、敵のパスミスを突き鮮やかなボレーを決めた彼は、鹿島のチャンスのほとんどを演出。圧倒的な存在感を示した。
 
 左サイドのカイオは川崎の右SB武岡と相対する場面が多かったが、ほとんどのマッチアップで勝利を収めた。
 
 空中戦では確実に競り勝ち、地上でも素早いターンで武岡に飛び込む隙を与えなかった。
 
 圧巻だったのが、武岡を背負ってのプレーである。
 あるときは背中の力で強引に押し込み、またあるときは浮いたボールを胸でトラップしてボールを収め、瞬時に反転して勝負を仕掛ける。
 
 後ろ向きになったFWと、その背後についたDFの戦いは、DFが有利だ。というのもFWは背中を押される中でボールを操り、反転までしなければならない。
 だが、そうした不利な状況でもカイオはあっさりとボールを収めて前を向き、武岡を押し込んでいった。
 
 鹿島の強さは前述したように成熟した組織力にあるが、突出した力量を持つカイオのような男がいると、その組織力はますます生きることになる。
 
 カイオは単独で一気に仕掛けることもあるが、局面によっては独特のリズムで足技を駆使しながら敵を押し下げていき、山本の攻撃参加を待つこともある。このあたりの駆け引きに、川崎は最後まで悩まされることになった。
 
 ベストヤングプレーヤーに輝いたように、デビューシーズンの2014年から優れたドリブラーだったカイオだが、いまや試合そのものを支配する存在感を身につけつつある。
 
 背中で敵を圧倒する21歳、カイオのプレーから目が離せない。
 
取材・文:熊崎敬
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