【鹿島】機能美に満ちた“11分のハイプレス”。守備の充実にCB植田直通は「“限定されて”ボールが来ていた」

2016年04月03日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

エウシーニョの背後には素早く柴崎が忍び寄り、さらに中央の森谷にも……。

鋭い出足で川崎のビルドアップを阻止。柴崎(10番)をはじめ、鹿島は中盤の選手たちの高い守備意識も際立っていた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 J1・5節のアウェー川崎戦は、シュート数でも決定機の数でも相手を上回っただけに、鹿島からすれば勝点1では物足りない結果だろう。とりわけ後半は厚みのある攻撃を繰り出し、決まってもおかしくないゴールチャンスも少なくなかった。

【PHOTOギャラリー|川崎 1-1 鹿島】
 
 もちろん、ピンチがなかったわけではない。27分にカイオのゴールで先制も、36分には最終ラインの背後を突かれて手痛い同点弾を喰らっている。ペースを握った後半もカウンターから何度か危ない場面を作られた。
 
 それでも、最後の一線は越えさせない。チーム一丸となり、しぶとく、粘り強いディフェンスで逆転弾を許さなかった。
 
「今日の試合は特別で、かなり押し込まれる時間帯が長く、ブロックを作っての守備が多かった。もっとサイドに行かせたかったなと思いました」
 
 身体を張ってシュートやクロスを撥ね返し続けたCBの植田直通はこう試合を振り返る。右SBの西大伍は、「相手はワンツーとかが上手い。やられる部分はありましたけど、最後はシュートコースをどっちか切るとか、最低限のことはできた」と手応えを口にした。
 
 決定力不足で"勝点2"を逃した反面、自陣ゴール前での強固さで"勝点1"を確保したとも言える。もっとも、この日は高い位置からの守備も悪くなかった。2トップの金崎夢生と赤﨑秀平が精力的にプレスをかけ、2列目、3列目の選手が連動して相手のパスコースを限定し、川崎の攻撃にノッキングを起こさせる。
 
 11分の"ハメ方"は見事だった。川崎DFがGKにバックパスすると、最前線の赤﨑が猛然とダッシュしてこれに詰め寄る。GKチョン・ソンリョンから横パスを受けた川崎の奈良竜樹は、前にいたエウシーニョに縦パスを通そうとするが、これに素早く反応したのが柴崎岳だった。鋭い出足でエウシーニョの背後に迫り、川崎のビルドアップを阻止する。
 
 最初の選択肢を消された奈良は、さらに右サイドにいた武岡優斗に預けると、武岡にはすかさずカイオが対応する。武岡は縦に行くことができず、近くにいる奈良には赤﨑、エウシーニョには柴崎が張り付いているため、パスを出せない。
 
 サイドに追い込まれた武岡は、中央にいるボランチの森谷賢太郎に横パスを入れると、森谷は金崎の激しい潰しにキープできず、倒れてしまう。結果的にこのチャージはファウルを取られてしまうが、鹿島の連動したハイプレスが機能したワンシーンだった。
 
 植田も前線の選手たちの頑張りには助けられたようで、「FWがまず外に追いやってくれていたので、僕たちからすれば"限定されて"ボールが来ていた。そういうところでは奪いやすかったかもしれないです」と語っている。
 

次ページプレスとブロックの使い分けは「コントロールできていた」(西)。

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