浦和の“ヘグモ式4-3-3”はまたも機能不全。2連敗の危機に指揮官が下した決断は――

2024年03月04日 河治良幸

ウイングにSBがマンツーマン

開幕2試合を終え、いまだ未勝利の浦和。ヘグモ監督は「クロス」と「エリア内への侵入」を改善点に挙げた。(C)SOCCER DIGEST

 5万人を超える観客が詰めかけるなど、注目を集めた3月3日のホーム開幕戦で、浦和レッズは東京ヴェルディに苦戦を強いられた。

 ペア・マティアス・ヘグモ監督にとって埼玉スタジアムでの初采配となるが、前節はアウェーでサンフレッチェ広島に0-2で敗れていることもあり、2連敗は許されない状況だったことは疑いない。

 しかし、城福浩監督が率いるヴェルディは浦和の意図を逆手に取るように、広島とはまた違った守備戦術で4-3-3の浦和を苦しめた。

 ヴェルディの4-4-2は横浜F・マリノスとの開幕戦から変わらないが、3ラインを縦に狭めながら、2トップの染野唯月と木村勇大は縦関係と横関係を臨機応変に切り替えながら、CBのアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテン、アンカーのサミュエル・グスタフソンの3人をチェックする。

 中盤はボールサイドにコンパクトな距離感で縦を切る一方で、最終ラインは高めのポジションを維持しながら、"ヘグモ式4-3-3"の強みであるウイングに対し、左右のSBがマンツーマン気味に付いて前向きにボールを受けられないようにケアしてきた。

 広島ほどハイプレスに来ない分、浦和は後ろでボールを持てるが、一発でウイングに出しにくく、しかもビルドアップの要であるショルツがボールを持つと、徹底して縦切りをされて、なかなかボールを前に運べなかった。

 ヴェルディは浦和のミスを誘発してボールを奪えば、素早くスイッチを入れてカウンターで仕留めに行く。守備を固めた浦和に正攻法で挑んでも、昨シーズンのJ1ベストイレブンであるショルツ、ホイブラーテン、守護神の西川周作を擁する牙城を崩すことは難しい。
 
 しかし、基本的に浦和がボールを持つ展開で、ヴェルディがボールを奪った時に隙を突いていけば、流れからでも得点チャンスはあるし、CKや危険な位置でのFK獲得にも繋がる。そうしたところからも、広島とはまた違ったヴェルディのしたたかさが見えた。

 浦和は自陣で数的優位になる分、GKの西川はもちろん、2CBとアンカーの誰かは前向きに持てるし、ボールと反対側のSBはフリーであることが多かった。ただ、ウイングは相手のSBが常にチェックしているため、シンプルに使うことができない。

 もちろん何度か縦にウイングを走らせるロングボールや縦パスも見られたが、左SBの深澤大輝が関根貴大、右SBの山越康平が松尾佑介に粘り強く付いて、有利な状態で仕掛けさせなかった。

 ただ、試合後にヘグモ監督も指摘していた通り、相手のSBが左右のウイングに対応する分、ファー側のCBとの間隔が通常の4バックより開いており、しかもラインが高めであるため、インサイドハーフの小泉佳穂や伊藤敦樹がウイングの代わりに、2CBにロックされたFWチアゴ・サンタナを追い越す動きで、ヴェルディの守備のポケットを取っていく余地は十分にあった。

 しかし、チームの共有が明確にならないまま、前半の終わりにCKの流れから木村のゴールでリードを許し、状況を難しくしてしまった。

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