【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.19~2008-09シーズン ~

2016年03月21日 サッカーダイジェストWeb編集部

プレミア3連覇達成も、CL連覇の野望はバルサに打ち砕かれる。

99年から01年以来、クラブ史上2度目のプレミア3連覇達成。通算18度目の優勝で、最多記録を保持していたライバルのリバプールに並んだ。 (C) Getty Images

 ドラマチックなPK戦の末にチェルシーを退け、チャンピオンズ・リーグ(CL)を制したユナイテッド。その大きな自信を持って迎えた08-09シーズン、チームの根幹を揺るがす衝撃的なニュースが流れた。
 
 オフシーズンにレアル・マドリーが「クリスチアーノ・ロナウドの獲得は時間の問題」と明かしたことで、移籍話が浮上。本人も「子どもの頃からの夢を実現できたら嬉しい」と前向きな姿勢を示したことで、ユナイテッドの関係者、ファンは大きな不安に苛まれたのである。
 
 この一大事を収束させたのは、指揮官のアレックス・ファーガソンだった。マドリーから提示された、8000万ポンド(約136億円)におよぶ高額オファーを拒否し、法的手段も辞さないという断固とした姿勢を持って臨んだのである。
 
 こうして、無事にC・ロナウドの引き留めたユナイテッドは、夏の補強でトッテナムからディミタール・ベルバトフを3100万ポンド(約50億円)で引き抜き、前線をテコ入れした。
 
 しかしシーズンが開幕すると、期待のタレント陣のコンディションが上がらず、ユナイテッドは出鼻を挫かれる格好に。そんな低調なチームにとって反撃の起爆剤となったのは、12月のクラブワールドカップだった。
 
 日本で9年ぶりの世界一クラブ決定戦に挑んだユナイテッドは、欧州王者としてのプレッシャーなど全く感じさせず、準決勝でガンバ大阪を5-3で下すと、決勝では南米王者のLDUキトにも1-0。余力を残して世界王者に輝いたのだ。
 
 これがモチベーションの向上に繋がり、士気が高まったユナイテッドは後半戦、一気に加速していく。
 
 12月26日の19節のストーク戦から驚異の11連勝を記録。22節以降、首位を譲ることなく、首位争いのライバルであるリバプールを引き離していった。そして37節のアーセナル戦で、クラブ史上2度目となるリーグ3連覇を達成したのだ。
 
 リバプールに並ぶ18度目の最多優勝記録を成し遂げたユナイテッドの勝因は、ライバルを凌駕するチーム力だった。なにしろ、ベルバトフとカルロス・テベスのどちらかをベンチに置かざるを得なかったのだから、なんとも贅沢な話である。
 
 加えて、31節のアストン・ビラ戦でデビューし、2戦連続弾を決めた17歳のフェデリコ・マケダをはじめ、ダニー・ウェルベック、ラファエウ・ダ・シルバとファビオ・ダ・シルバの双子などユース上がりの若手が続々とデビューを飾ったことで、チームの水準は大きく上がった。
 
 ライバルを凌ぐ分厚い戦力を維持し、高質なローテーションを実現させたユナイテッドは、連覇の懸かったCLでも躍進。グループステージから12戦無敗(5勝6分け0敗)で、2シーズン連続の決勝戦進出を決めた。
 
 シーズンを跨いで25戦無敗を誇るユナイテッドは、絶対的な自信を持ってバルセロナとの一戦に臨んだが、リオネル・メッシ、サミュエル・エトー、ティエリー・アンリの3トップを擁する相手の圧倒的な攻撃力に屈し、0-2の完敗を喫した。
 
 ウェイン・ルーニー、テベス、ベルバトフ、C・ロナウドを並べる4トップに反撃を託したファーガソンの強気な采配も効果がなく、欧州連覇を目論んだユナイテッドの野望は、スペイン王者の3冠達成という偉業の前であえなく打ち破られたのである。
 

次ページ2008-09シーズン成績&主なトランスファー

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事