新生アントラーズ、PSMで見えたポポヴィッチサッカーの浸透度。1つ懸念材料があるとすれば...

2024年02月12日 元川悦子

完成度の高さをうかがわせた

恒例の「いばらきサッカーフェスティバル」で、鹿島は樋口(14番)のゴールで水戸に1-0で勝利した。写真:永島裕基

 2月23日のJリーグ開幕まで2週間を切った。各クラブが準備を進めるなか、ランコ・ポポヴィッチ監督を招聘し、新体制へ移行した鹿島アントラーズの2024年の出足は今のところ悪くなさそうだ。

 それを象徴したのが、10日に行なわれたプレシーズンマッチ「いばらきサッカーフェスティバル」の水戸ホーリーホック戦だ。

 新助っ人のチャヴリッチが土居聖真と2トップを組み、FWの知念慶がボランチにトライ。大卒新人の濃野公人やプロ2年目の19歳・津久井佳祐らが先発出場するなか、彼らは新指揮官が求める縦への意識と強度を前面に押し出すサッカーを展開した。

 前半は非常に連動性に富む戦いを見せ、21分に樋口雄太が先制点をゲット。完成度の高さをうかがわせた。

「監督がポポさんになって、キャンプ前、そしてキャンプ中に積み上げてきたものを全員が共通認識を持ってやれていました。ムリやりじゃなくて、人と人とがつながって意図的な攻撃、意図的なボールの握り方が、練習や練習試合を重ねるにつれて積み上がっている」と土居は前向きなコメント。

 ボランチで新境地を開拓しつつある知念も、昨季との明確な違いを言葉にする。

「前に入ったタイミングで周りの選手が動き出しているし、入る前から狙いを持って動いている感じが見受けられている。そこが去年とは違う。縦に入った時にダイレクトで落としてサイドに展開するといった戦術練習を長くやってきたので、選手に染みついていると思います」
 
 確かに"ボトムアップ型指揮官"だった岩政大樹前監督は、ビルドアップや攻撃の組み立てなどを選手の判断に任せる部分が多かったが、ポポヴィッチ監督は基本的なパターンを徹底的に反復させるタイプ。

 となれば、選手たちはやるべきことを明確にしやすいし、意図を持ってピッチ上で実践できる。新体制でスタートしたばかりの鹿島にとっては、その方がチーム作りは早く進むのかもしれない。

 ここから2週間で期待のチャヴリッチがコンディチョンをさらに上げ、もう1人の新外国人選手であるギリェルメ・パレジもフィットしてくれば、もう少し攻撃の分厚さが出てくるのではないかという期待もある。

 顔面骨折でリハビリ中の鈴木優磨は凄まじい勢いで回復に努めており、状況次第では23日の開幕・名古屋グランパス戦に戻ってくる可能性がないとも言えない。そうなれば、指揮官にとっては頼もしい限りではないか。

 現状では、ボランチとセンターバック、サイドバックの選手層は手薄感もないとは言えないが、今のところはポジティブな印象を抱いて良さそうだ。

【PHOTO】大声援で勝利を後押しした鹿島アントラーズサポーター!

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