アマゾンのジャングルでジョーが現役復帰!名古屋と決別した問題児のこれが最後の挑戦か【現地発】

2024年01月24日 リカルド・セティオン

サッカーがジョーに愛想を尽かした

36歳のジョーは、2部に昇格したアマゾナスで現役復帰。はたして最後の一花を咲かせることはできるか。 (C)REUTERS/AFLO

 ブラジルサッカー界では、想像もできないことが普通に起こる。
 
 悪童ロマーリオが上院議員になったり、サッカーの神様ペレを輩出した名門サントスが2部に降格したり、はたまたセレソンで「正式監督不在」の状況が1年近く続いたり……。
 
 そして今回は、アマゾンのジャングルから驚きのニュースが舞い込んだ。なんと名古屋グランパスの元選手であるジョーが、アマゾンで選手として復活したのだ。
 
 新型コロナウィルス禍でJリーグがストップしていた2020年に、名古屋との契約を残しながらもジョーがコリンチャンスに無断で移籍したのは、日本のみなさんの記憶にも残っていることだろう。結局FIFAのDRC(紛争解決室)に問題は持ち込まれ、コリンチャンスとジョーに罰金の支払いが命じられた。
 
 そのコリンチャンスでもジョーは、練習を無断で欠席すれば、怪我でドクターストップがかけられている期間に、試合中継をバックにクラブでバカ騒ぎしている姿をスクープされるなど度々トラブルを起こし、チームが説明を求めると一方的に退団要求のメールを送り付けてクラブと決別した。
 
 その後、ブラジルリーグ1部で下位に低迷していたセアラで半年プレー(11試合・2得点)したのち、23年1月にサウジアラビアのアル・ジャバラインに移籍。しかし、顔見せをしただけで結局1分もプレーしないまま入団から5日後に退団した。
 
 そして、そのままピッチに戻ることなく23年2月に現役引退を表明する。騒動を起こしてばかりのジョーを、どのクラブも欲しがらなかったからだ。サッカーを辞めたというより、サッカーがジョーに愛想を尽かしたと、そう表現した方が正しいかもしれない。私生活もめちゃくちゃで、同じ女性と結婚と離婚を二度も繰り返している。

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 そんなジョーが、久しぶりにニュースになったのは23年11月のこと。サンパウロ市にあるヴァルゼア(草サッカー)リーグのエジステンテ・フッチボウ・エ・サンバ、つまり「サッカーとサンバで存在する!」という奇妙な名前のチームでプレーすることになったというのだ。
 
 ところが、ジョーはまたしても「プレー時間0分」でチームを退団した。そして24年1月5日、アマゾンの真ん中にあるマナウスのクラブ、アマゾナス(2部)に移籍することが決まったのだ。
 
 アマゾナスは2019年に創設されたばかりの新興クラブで、23年シーズンに3部のチャンピオンとなり、24年シーズンは2部でプレーする。1部昇格を目指すその切り札として、ジョーを獲得したのだ。
 
 ブラジル人にとってアマゾンとは、サッカー不毛の地を意味する。事実、この38年間でアマゾナス州からブラジルリーグ1部のチームは出ていない。
 
 それにしても、コリンチャンスやCSKAモスクワ、マンチェスター・シティ、エバートンといった強豪で活躍し、14年ブラジル・ワールドカップではセレソンの一員としてプレーした選手の晩年とは思えない。ジョーにはもっと別の"締め括り方"があったはずだ。
 
 3月に37回目の誕生日を迎えるベテランは、ジャングルで最後の一花を咲かせることができるのか。それともこれまでと同じように、またすぐに旅立ってしまうのか。ジョーの未来は誰にもわからない。
 
取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
 
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとし中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
 
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