【今日の誕生日】3月13日/勝敗をも左右した偉大な汗かき役――ダービッツ

2016年03月13日 サッカーダイジェストWeb編集部

サッカーの歴史において守備的MFの理想形に最も近づいた男。

よく走る選手はいくらでもいるが、試合の行方にこれほど影響を与えた中盤の汗かき役は、サッカーの歴史においてもそう多くはないだろう。 (C) Getty Images

◇エドガー・ダービッツ:1973年3月13日生まれ スリナム・パラマリボ出身
 
 まさに中盤のダイナモ。信じられないようなスタミナで90分間、ピッチを縦横無尽に走り回った。危機察知能力を活かして危険の芽を摘み、こぼれ球を拾ってチームの多重攻撃を演出。技術も高く、また鋭いシュートで貴重な得点も挙げた。
 
 現在のサッカー界でもなかなかお目にかかれない、中盤のオールマイティープレーヤー。それがエドガー・ダービッツだった。
 
 1991年にプロデビューした小柄なオランダ人が、世界でその存在を認識されるのは94-95シーズン。アカデミー時代から在籍したアヤックスの中盤でポジションを掴んだ彼は、当時最強だったミランから1シーズンに3度(グループリーグ2試合と決勝)も零封勝利を奪うのに大きな貢献を果たした。
 
 96年、アヤックスのチームメイトだったミカエル・レイツィハー、ウィンストン・ボハルデとともにミラン入り(翌シーズンはパトリック・クライファートも続いた)。しかし、アヤックス勢は揃って不振を極め、ダービッツは2シーズン目に骨折という不運にも見舞われた。
 
 転機は98年1月に訪れる。中盤の強化を狙うユベントスが、彼を獲得したのだ。今度はそのプレースタイルがフィットし、ダービッツはスクデット獲得に貢献。この頃は、どのクラブからも欲しがられる選手のひとりだった。
 
 2004年にバルセロナへレンタル移籍し、ここでも重宝された彼は以降、インテル、トッテナム、アヤックス、クリスタル・パレスと渡り歩き、最後は14年、イングランド3部リーグのクラブ、バーネットのプレイングマネジャーとして最後の現役生活を送った。
 
 94年に初招集を受けたオランダ代表では、EURO96(ベスト8)を皮切りに、98年フランス・ワールドカップ(4位)、EURO2000(ベスト4)、EURO2004(ベスト4)に出場。フランスW杯では決勝トーナメント1回戦のユーゴスラビア戦で、終了間際にミドルから決勝ゴールを奪っている。
 
 アヤックスでリーグ優勝3回、チャンピオンズ・リーグ1回、UEFAカップ1回、トヨタカップ1回、ユベントスでもリーグ優勝3回といったタイトル獲得に貢献し、個人では98年W杯ではベストイレブン、EURO2000では優秀選手のひとりに選出された。
 
 その強気の姿勢と歯に衣着せぬ物言いは何度もトラブルを起こし、起用方法や待遇などをめぐって監督やクラブと揉めることも少なくなかった。また00年、薬物検査に引っかかって出場停止処分を受けたことも、彼のキャリアの汚点となった。
 
 しかしピッチ上では力を抜くことなく、サッカーの歴史において守備的MFの理想形に最も近い選手といわれたダービッツの、選手としての価値の高さは、04年にFIFAが発表した歴代名選手100人「FIFA100」に名を連ねたことでも証明されている。
 
 00年には緑内障を患い、失明の危機に見舞われた(前述の薬物反応はその治療薬によるものだともいわれている)。それ以降、トレードマークとなったゴーグルを着用して疾走するダービッツの勇姿は、人々の記憶に深く焼き付いている。
 
 さてダービッツといえば、その出生地が南米スリナムで、2歳の時にオランダに移住してきたことでも知られている。彼のようなケース、あるいは先祖の代で大西洋を越えたという、いわゆるスリナム系オランダ人は、過去を振り返ってもサッカー界には非常に多い。
 
 スーパースターのルート・フリット、フランク・ライカールトをはじめ、ジェラルド・ファネンブルク、アーロン・ヴィンター、ブライアン・ロイ、クラレンス・セードルフ、レイツィハー、ボハルデ、ジミー・フロイド・ハッセルバインク……一時代を築いた選手の多くにスリナムの血が流れている。
 
 クライファートは先日、母の祖国であるキュラソー島の代表監督に就任したことが話題になったが、父はスリナム人だ。ライカールト指揮時のバルセロナで、彼のアシスタントとして黄金時代を創成したヘンク・テン・カテのルーツも、やはりこの南米の小国にある。
 
 現役の選手でも、ナイジェル・デヨング、ケネス・フェルメール、ジェフリー・ブルーマ、ジョルジニオ・ヴァイナルダムなどの選手がオランダ代表に名を連ねており、全体数は相当なものになるはずだ。
 
 優れた人材を輩出するスリナム。近年は二重国籍を認めて代表チームを強化しようという動きもあるようで、そうなればさらに、この国の血を受け継いだ選手たちの活躍の場が増えることになる。再びここからスーパースターが出現するか!? 楽しみである。
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