焦点の定まらないタイ戦。最終選考を兼ねたテストマッチでさえもなかったが、元日の企画としては秀逸だった

2024年01月02日 加部 究

新戦力候補と活動を共有できるのは一石二鳥

アジアカップの選考に漏れた選手を4人も起用した森保監督。直前に迫る本大会への準備という建前には無理があった。(C)SOCCER DIGEST

[国際親善試合]日本 5-0 タイ/1月1日/国立競技場

 焦点の定まらない親善試合だった。

 初選出の伊藤涼太郎や奥抜侃志を抜擢し、藤井陽也をデビューさせて、選出2度目の佐野海舟がフル出場を果たしたスタメンには、玉手箱の鮮度があった。

 もちろん勢いのある今だからこそ、競争を促し新しい可能性を探り続けるのは大切だ。しかし反面、振り返ればアジアカップの選考に漏れた選手を4人も起用していたわけだから、直前に迫る本大会への準備という建前には無理があった。

 80分間近くピッチで君臨し、先制ゴールも決めた田中碧が事前の話し合いもなくプレーしていたとは考え難く、試合終了から約2時間半後にはメンバーが配布されたことを思えば、タイ戦は最終選考を兼ねたテストマッチでさえもなかったことになる。

 ただし試合の主旨はともかく、天皇杯が消えた元日の企画としては秀逸だった。正月=サッカーの伝統は、アマチュア時代から色濃く残る日本独特の文化とも言える。しかも今の日本代表ブランドは強烈で、三笘薫や久保建英が不在でも、まだまだ欧州にも次期スター候補生はひしめいている。
 
 まして正月がオフのクラブなら、放っておいても帰国する選手も少なくない。そんなタイミングで新戦力候補と活動を共有できるのは一石二鳥だった。

 結局、森保一監督は、伊東純也という目玉商品にキャプテンマークを託し、間もなく欧州へ飛び立つであろう藤井や森下龍矢には、たぶん激励を込めてピッチに送り出した。これで国立競技場に6万人を超える大観衆が集まったのだから、興行としては申し分なかった。

 またタイという招待客も、指揮官の大胆な施策を後押しした。タイは伝統的に繊細な技術を継承しアマチュア時代には何度か痛い目にも遭ったが、現状では負けるリスクを伴う相手ではない。

 特にここ数年間で強度の面ではトップシーンと溝が広がっており、それを象徴したのが、ACLでタイ国内では2年連続三冠のブリーラム・ユナイテッドが、ホームでJ2の甲府に完敗したことだった。

【動画】2024年第1号弾は田中碧!

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