伊東が抜け出した時、伊藤涼と奥抜は何をしていた? タイ戦の前半に見られたフレッシュ組の課題と可能性

2024年01月02日 河治良幸

良い宿題をもらった試合

タイ戦で代表デビューを飾った奥抜。持ち前のスピードは申し分ないが、判断の部分で中村との差が見えた。(C)SOCCER DIGEST

 日本代表は元日のタイ戦で5-0と勝利した。その直後に森保一監督はアジアカップに臨む26人のメンバーを発表。"元日組"からは17人が招集され、佐野海舟(鹿島)と細谷真大(柏)が選ばれた一方で、タイ戦で先発してA代表デビューを飾った伊藤涼太郎(シント=トロイデン)や奥抜侃志(ニュルンベルク)、藤井陽也(名古屋)などの名前はなかった。

 タイ戦に関しては、年末年始に試合のあった欧州組など、チーム事情で参加できない主力組がいた以上、シンプルに生き残りをかけた試合というより、その先につながる貴重な経験の場とも捉えるべきだ。佐野や細谷に関しても、タイ戦でアピールできたことに加えて、ボランチとFWの枠に滑り込む余地があったことも確かだ。

 藤井は欧州移籍の可能性が伝えられており、同じ名古屋の森下龍矢にしても、ポーランド1部のレギア・ワルシャワとクラブ間合意に達しているものの、正式な加入手続きや新天地での準備を考えても、1か月拘束されるアジアカップの参加は移籍の妨げになりかねない。常連メンバーの田中碧(デュッセルドルフ)が外れたことからも、タイ戦がアジアカップの選考に必ずしも直結しない部分はあるだろう。

 それを踏まえて、今後の可能性として見ても、伊藤涼や奥抜などは名刺がわりの活躍とはいかなかった代わりに、良い宿題をもらった試合と言える。

 前半は0-0、後半だけで5得点という結果を見ると、すべて前半が悪くて、後半で劇的に良くなったという見方が強まってしまうが、キャプテンとして前後半のピッチに立っていた伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)は「シンプルに相手が耐えきれなくなったというのが大きいのかな」と振り返る。

 もちろん、後半と同時に堂安律(フライブルク)と中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)が入り、ダイナミックな攻撃がチームに勢いを与えたことに加えて、右の伊東、中の堂安、左の中村という馴染みのあるメンバーによる意思疎通も効果を発揮しただろう。
 
 普段は伊東と右サイドのポジションを争う堂安が中央で、同時にピッチに立つのは初めてだが、代表での経験値と共有というものは大きなアドバンテージだ。それは68分から伊東に代わり、キャプテンマークを巻いた南野拓実(モナコ)にも言える。

 A代表デビューの伊藤涼、奥抜、藤井を含む、フレッシュなメンバーで臨んだ前半で良かったのが、常に前からボールを奪いに行き、相手陣内に押し込んでプレーする時間が長かったことだ。そこから多くのチャンスを作ることができた。

 そのなかで「上手く連係で崩したり、シュートに行けるシーンがあったので。そこで決めていればというのはあります」と伊東も振り返るように、1つ決まっていたら、また違った評価になっていただろう。

 タイ代表は4ー3ー3をベースに、守備ではアンカーの中締めを徹底してきた。その分、日本はサイドで多少ボールを持てるが、結局は相手の中央が崩れていないので、最後の部分でこじ開けることができない。

 ただ、そうした状況でもサイドチェンジを早く入れるとか、周りがボールホルダーを追い越す動きを効果的に入れていたら、ゴールの可能性をさらに広げられたかもしれない。

【動画】川村拓夢がヘッドで代表初ゴール!

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