「請求書を送らないといけない」急きょ初芝橋本のベンチに入った“名伯楽”がチームを力強く後押し!早稲田一男に高校サッカーの舞台はよく似合う【選手権】

2023年12月30日 森田将義

3年前に日章学園の監督を退任

初芝橋本のベンチ前に笑顔で並ぶ阪中監督(左)と早稲田氏(右)。写真:森田将義

[高校選手権1回戦]初芝橋本(和歌山) 3-2 帝京三(山梨)/12月29日/駒沢

 3年ぶり17回目の選手権に挑む初芝橋本のベンチには、普段見られないと言うべきか、高校サッカーを知る者にとっては見慣れた日章学園の前監督、早稲田一男氏の姿があった。

 早稲田氏は2020年度限りで日章学園を離れ、現在はJリーグ入りを目ざすFC延岡AGATAのU-15監督として中学生を指導。初芝橋本の阪中義博監督とは古くからの付き合いで、2016年には高校選抜で監督、コーチとしてタッグを組んでいる。阪中監督が恩師として慕うように、今でも親交は深い。
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 大会前に早稲田氏が「ハツハシの応援ツアーに行く」と電話で伝えたところ、阪中監督が「ベンチに入ってください」とオファーし、臨時コーチとしてスタッフ欄に名前を加え、この日のベンチ入りとなった。ただ応援に出向くだけのつもりだった早稲田氏にとっては青天の霹靂。「まさか、こんなことになるなんて」と驚きつつもこう続ける。

「こういう環境でできるのは、最高に素晴らしい。芝生の状態はもちろんだし、スタジアムの雰囲気もそう。これだけの観客の前で勝負をかけたゲームができるのは凄い。プロの次ぐらいに華やかな舞台じゃないですかね」
 
 高校サッカーの舞台から離れていたが、いざ現場に立つと燃えるものがあったように見える。

 会場入りしたタイミング、試合前後の計3回、阪中監督に促され、選手たちに言葉をかけた。現役時代は帝京で選手権優勝を果たし、引退後も日章学園を15度の選手権出場に導いた人物の言葉は違う。「戦術だけではない。やっぱり心のある人だから、メンタル的なアプローチが上手い。選手に声をかけて、上手くリードしてくれる。奮い立たせる言葉がけが上手」と話すのは阪中監督だ。

 エースのFW朝野夏輝(3年)もこう続ける。

「高校サッカーのレジェンドである早稲田さんが来てくださった。レジェンドからの言葉は身体に沁みる感覚があったので、絶対に勝ちたいなと思って試合に挑みました。真面目な話の中に砕けた話も入れて、硬い表情だった自分たちを和ませてくださった。おかげで自分たちの雰囲気が良くなって、試合に入れたと思っています」

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