異例の12月に4年生の加入内定。筑波大GK高山汐生が描いた一気の成長曲線。先発落ちに焦りも「現状を受け入れたほうが成長の糧にできる」

2023年12月24日 安藤隆人

練習参加の回答はいつも「保留」

神戸でプロキャリアをスタートさせる高山。190センチの恵まれた体躯と安定感あるセービングが魅力の守護神だ。写真:安藤隆人

 12月7日、筑波大の4年生GK高山汐生のヴィッセル神戸への加入内定が発表された。

 正直、この発表には驚いた。なぜならばインカレが開催される冬の時期に2、3年生ではなく、4年生のJ1クラブの内定は非常に珍しいケースだからだ。

 しかも、J1クラブが激しい争奪戦を繰り広げたことで迷って決断が遅れたのではなく、高山の場合は多くのJクラブに練習参加するも、オファーをもらうことができなかった状況でのJ1優勝クラブへの内定発表だったからこそ余計に驚きだった。

「9月末のリーグ戦が再開した時に、神戸のスカウトの方が見に来て下さっていて、その後にすぐに呼んでもらって、そこからオファーをもらえたことは驚きましたが、素直に嬉しかったですね」

 こう語る高山だが、ここに至るまではかなり浮き沈みの激しいものだったことは容易に想像できる。湘南ベルマーレU-18からやってきた高山は190センチのサイズと安定感を武器に1年時から頭角を現し、3年生だった昨年は筑波大の正守護神として君臨していたが、2学年下のGK佐藤瑠星の存在はいつも脅威だった。
 
 佐藤も190センチのサイズを誇り、しなやかなキャッチと身体能力の高さを持ち、高校ナンバーワンGKの看板を提げて大津高からやってきた。それでも昨年はフィジカルに勝る高山がリードしていたが、今年に入り佐藤がさらに成長を遂げた。

 その姿に高山は少なからず焦りを覚えていた。「ミスしてポジションを奪われたくなかった」と無難なプレーに終始するようになり、持ち前の積極性が影を潜め始めた。それでもリーグ戦の前期途中まではレギュラーだったが、7月のアミノバイタルカップでついに佐藤にレギュラーの座を奪われてしまった。

「僕はずっとプロになりたいと思って、Jクラブに練習参加しましたが、いつも回答は『保留』でした。そんななかで4年生のアミノバイタルカップは全国大会につながる大会ですし、集中開催のような形になるので、多くのスカウトの人たちが来てくれるじゃないですか。その大会に出られずにアピールできなかったことは相当悔しかったですし、正直焦っていました」

 しかも筑波大は総理大臣杯の切符を掴めなかったことで、夏の全国大会というアピールの場も無くなってしまった。それ以上に、高山は今年に入り、佐藤を羨ましく思ってしまったり、スカウトの評価を気にしてしまったりと、周りばかりに目を向けて、肝心の自分自身に目を向けられていなかった。それに気づいたのが、アミノバイタルカップだった。

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