【バイタルエリアの仕事人】vol.35 太田宏介|「理想よりも現実」黒田ゼルビア躍進の背景に美徳度外視のリスク回避。気になるセカンドキャリアは…

2023年12月28日 有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

「あの光景がキャリアで1番嬉しかったですね」

18年間のプロ生活に別れを告げた太田。濃厚な日々を1つ1つ丁寧に振り返った。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第35回は、今季をもってFC町田ゼルビアで現役を引退した太田宏介だ。

 36歳、日本代表でも7試合に出場したレフティは、横浜FCでプロキャリアをスタート。都並敏史監督の熱血指導のもと、左SBとして頭角を現わした後、清水エスパルスに活躍の場を移すと、Jリーグを代表する選手となった。

 以降、最も長く過ごしたFC東京、名古屋グランパスほか、オランダのフィテッセ、オーストラリアのパース・グローリーでもプレーし、2022年夏に生まれ故郷の町田に加入。そして青森山田高で一時代を築いた黒田剛監督を迎えた今季、J2優勝を成し遂げ、クラブ史上初のJ1昇格の快挙とともに、18年間のプロ生活に別れを告げた。

 明るい性格で知られ、誰からも愛された太田に、まずは今年1年を振り返ってもらった。

【インタビューPHOTO】「底辺中の底辺からスタート」した太田宏介が愛する町田で有終の美!"幸せを運ぶエンジェルレフティ"を直撃
 
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 選手もスタッフも大きく入れ替わったなかで、最初は不安もありました。クラブ全体が1つとなって、同じ目標に向けて戦えたことが、この大きな結果を残せた要因です。シーズン前からシーズン後まで、本当にみんなが結束力を高めてまとまった、すごく良いチームになったなと思います。

 昇格は嬉しいですね。プロ1年目に横浜FCで経験しましたけど、その当時はなかなかゲームに絡めませんでしたし。18年間のキャリアの最後と位置付けたこの1年で、地元町田でこのような結果を残すことができて、本当に、本当に幸せです。

 生まれ育った町田に、かつて所属したFC町田(現FC町田ゼルビアジュニアユース)に、キャリアの最後に戻ってきて、J2優勝、昇格という大きな目標を成し遂げられたこと。小さい頃に見ていた野津田の景色とは全く違った、大きくなった野津田であれだけ多くの方に見守っていただいて、優勝のシャーレを上げることができて、セレモニーもしていただいて、あの光景がキャリアで1番嬉しかったですね。

次ページビルドアップ全盛のこの時代に頑として貫く、己のスタイル

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