【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.15~2004-05シーズン ~

2016年03月07日 サッカーダイジェストWeb編集部

18歳のルーニー加入! 若返りは進むもタイトルに手は届かず…。

新加入のルーニーはリーグ戦でチーム唯一の二桁得点を挙げるなど、期待通りの活躍を果たした。 (C) Getty Images

 デイビッド・ベッカム退団の影響に振り回された前シーズンの悪夢を振り払い、覇権奪還を目指したアレックス・ファーガソンは、開幕前に新進気鋭の若手の補強に動いた。
 
 まずはジェラール・ピケ、ジュゼッペ・ロッシという経験の浅い2人の若手を青田買い。そして移籍市場最終日には、18歳の新星ウェイン・ルーニーをエバートンから、2750万ポンド(約46億7500万円)という大金をつぎ込んで獲得した。
 
 ルーニーはメガクラブ初挑戦ながら、物怖じしない性格が好転し、リーグ戦でチームトップの11ゴールを記録。そのルーニーに触発されたのか、移籍2年目のクリスチアーノ・ロナウドも独善的な動きが減り、質の高いドリブルで相手守備陣を切り裂いた。
 
 しかし、切磋琢磨する2人のヤングスターの健闘も、ユナイテッドを劇的に変えるまでには至らなかった。
 
 上向く兆しが見えないユナイテッドを尻目に、プレミアの優勝戦線をリードし、王者となったのはチェルシーだった。
 
 シーズン前、本格的な改革に着手したチェルシーは、ポルトを率いてチャンピオンズ・リーグ(CL)を制したばかりのポルトガル人指揮官、ジョゼ・モウリーニョを招聘した。
 
 そして9000万ポンド(約180億円)近い巨額を注ぎ込み、ディディエ・ドログバ、アリエン・ロッベンなど各国のスターを補強して戦力を整えると、堅守のフットボールで50年ぶりのリーグ制覇を成し遂げたのだ。
 
 そんなチェルシーにシーズンダブルを喫したユナイテッドは、リーグを3位でフィニッシュ。CLは決勝トーナメント1回戦でミランに完敗、FAカップは決勝まで勝ち進むも、宿敵アーセナルにPK戦の末に敗れるなど、屈辱的な結末で03-04シーズンを終えた。
 
 無冠に終わった主因には、プレミア創設以降で最低のリーグ総得点(58)を記録してしまった攻撃陣の著しい得点力不足と、新システムに固執したファーガソンの采配ミスが挙げられた。
 
 このシーズン、ファーガソンは新たなシステムに勝機を見出そうと4-3-2-1を採り入れ、ルート・ファン・ニステルローイが長期離脱していた序盤戦は1トップにルーニーを起用して、ファン・ニステルローイ復帰後はルーニーを左サイドに配置転換した。
 
 しかし、頑なに1トップにこだわったファーガソンの選択は、結果としてトップコンディションではないファン・ニステルローイを頂点に置いたことで攻撃が停滞し、本来の恐さを失うキッカケとなった。
 
 それでも、ユナイテッドがタイトルレースに踏みとどまれたのは、守備陣の奮闘があったからだ。
 
 薬物検査の受け忘れによる8か月の出場停止処分を科せられていたリオ・ファーディナンドが9月に復帰を果たすと、ブランクを感じさせない動きと抜群のリーダーシップでDF陣を見事にまとめ上げた。
 
 さらに、パリ・サンジェルマンから移籍したガブリエル・エインセも豊富な運動量を武器に左SBに定着し、計算できる戦力となってチームに貢献した。
 
 ヤングスターの躍動と守備陣の奮闘が光っただけに、ファーガソンが1トップにこだわらず、従来の2トップに変更するなど臨機応変な采配を振るってさえいれば、無冠は免れていたかもしれない……という悔いが残るシーズンだった。
 

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