無念の負傷交代の小林悠の隣にそっと寄り添った脇坂泰斗。天皇杯決勝での感動的なワンシーン

2023年12月10日 本田健介(サッカーダイジェスト)

会話はなくともベンチにはふたりの姿が

試合後にはチームメイト優勝を喜ぶ。小林の表情にも笑顔があった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[天皇杯決勝]川崎 0(8PK7)0 柏/12月9日/国立競技場

 12月9日に国立競技場で行なわれた天皇杯決勝を制したのは川崎だ。延長戦を経てもスコアが動かなかったゲームをPK戦の末に制した。

 その一戦で印象に残ったシーンがある。

 77分からピッチに立っていた小林悠が、負傷のため延長戦の後半開始時にバフェティンビ・ゴミスと交代したのだ。

「俺がフロンターレを勝たせる」

 自らにプレッシャーをかける意味でも、そしてゴールを取る自信があるからこそ、小林はそう言い切っていた。だからこそ、重要な場面での途中交代は悔しさしかなかったのだろう。

 ベンチではタオルで顔を覆う小林の姿があった。

 するとその横にスッと座り、寄り添う選手がいたのである。延長戦に突入する間際にベンチに下がっていた脇坂泰斗だ。

【動画】川崎、天皇杯優勝の瞬間!
 脇坂はこう振り返る。

「悠さんが交代してしまって悔しい想いを抱えているのは表情からも見て取れました。自然と、今、自分が隣にいないといけないなと思ったんです。

 でも特に言葉はかけませんでした。隣に座っていることに意味があるのかなと」

 小林に数々のゴールをアシストし、小林にとっては憧れの存在だった中村憲剛から14番を継いだ脇坂が、今はその隣にいる。

 試合後には満面の笑みで優勝を喜ぶ小林の姿があったが、歓喜に辿り着くまでには数々のドラマがあった。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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