【横浜】初先発濃厚のレフティ前田直輝が、トリコロールの攻撃を鮮やかに彩る!

2016年03月05日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「やっぱり、自分の武器はドリブルしかないんで」

背番号25はかつて中村俊輔も背負っていた特別な番号。期待に応えたい。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 昨季の松本や東京V時代に醸し出していた"イケイケ感"がない――。
 
 開幕戦を数日後に控えたある日の練習後、引き上げてくる前田直輝を呼び止めると、その表情はまるで冴えなかった。
 
「山雅での表情を見ている人は、そう思うんじゃないですかね。まだ自分を出し切れていない部分がありますから」
 
 この日のゲーム形式の練習で、前田はサブ組でプレーしていた。前日はレギュラー組に入っていたという。「昨日の調子が悪かったからじゃないですか、分からないですけど。理由もまだ聞いていませんし」と本人はそっけない。
 
 4-2-3-1を基本布陣とする横浜で、2列目右サイドはレギュラーが流動的なポジションだ。前任者は、G大阪に移籍したアデミウソン。その大きな穴を埋めるのに、チームは試行錯誤を重ねている。
 
 前田がその有力候補のひとりであるのは間違いない。しかし、あくまでも〝候補″であって、依然として兵藤慎剛や仲川輝人らとの熾烈な争いの渦中にいる。
 
 事実、開幕戦では兵藤がこのポジションで先発した。試合は0-1で敗れ、ベンチに座る前田に出場の機会は訪れなかった。
 
「ぶっちゃけ、山雅でもスタメンで出始めたのは7節ぐらいですし(編集部・注/実際は6節・山形戦で初スタメン)、徐々に試合で自分の存在価値をアピールできたらなと思っています」
 
 東京Vの下部組織出身で、テクニックには絶対の自信があるが、「1タッチ、2タッチが多くて、テンポが良い」という横浜のサッカーにフィットするのに時間がかかっているようだ。そのことも、笑顔が少ない理由のひとつなのだろう。
 
 手数をかけず、複数人が連動して縦に速くボールを運ぶサッカーにどう適応していくか。だからといって、自分のスタイルを捻じ曲げようとは思わない。「足もとに(ボールが)入る時間が多くなれば、もうちょい溶け込めるかな」とイメージする前田は、言葉に力を込めて揺るぎない自信をのぞかせる。
 
「やっぱり、自分の武器はドリブルしかないんで」
 
 もちろん、それだけにこだわるつもりはない。「使い分けが上手くできたらいい」と、あくまでもチーム戦術のなかで、"違い"を生み出そうとしている。
 

次ページカットインからの“右45度”で結果を残したい。

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