昇格と降格を繰り返す横浜FC。小野伸二に感化された伊藤翔の想い「このクラブのために力を使うのは...」自分のサッカー人生をどう紡ぐか

2023年12月04日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「そういう考え方もあるんだなって」

レンタル移籍を挟み、21年から横浜FCに所属する伊藤。来季の去就はどうなるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 横浜FCのJ2降格が決まった。12月3日に行なわれた最終節の鹿島アントラーズ戦で、大勝すれば残留の可能性はあったが、1-2で敗戦。奇跡は起きなかった。

「プロとしての姿勢を示さなければいけない」

 鹿島戦の前にそう語っていたのは、伊藤翔だ。最下位の横浜FCは勝点29、17位の柏レイソルは同32。3ポイント差だが、得失点差は-12。残留は「現実的に厳しい」と受け止めていたが、最後まで力の限りを尽くす覚悟でいた。

 厳しい状況でラストゲームを迎えるまでの戦いぶりには、手応えと悔しさを感じていた。「上位チームにも勝てた。J1で十分に戦える」。だからこそ「めちゃくちゃもったいないし、もっとやりようがあった」と唇を噛む。

 近年の横浜FCは、昇格と降格を繰り返す、いわゆる"エレベータークラブ"となっているが、伊藤は「こういうことを繰り返して、クラブは大きくなると思う」と自身の考えを口にする。
【PHOTO】カシマに集結し、最後まで声援を送り続けた横浜FCサポーター!(Part1)
 その一助に自分もなれれば――35歳のベテランFWは、1つの思い出を紐解く。

「俺がまだ若い時に、シンジさん(小野伸二)は30ちょいだったかな、よくご飯とか連れてってもらっていた。で、だんだん歳をとってくると、やりがいを見つけるのが難しくなるっていう話をしてくれて。これから海外に行ってやろうとか、ワールドカップで優勝してやろうとかではなく、サッカー自体は楽しいけど、どういう感じで自分のモチベーションを構築していくかっていう話を、最近思い出した」

 かつての小野の心境に、今の伊藤が自分の想いを重ねる。

「シンジさんは、J2の札幌に行って、J1に上げて、J1のクラブにするっていうのが、その時の目標だったと思う。そういう考え方もあるんだなって。今、横浜FCがちょうど狭間みたいな感じだし、このクラブのために力を使うのは、自分のサッカー人生的にありなのかなって」

 伊藤自身、横浜FCというクラブに思い入れもある。鹿島時代に膝の調子が悪く、一時は真剣に引退の二文字が頭をよぎった。それでも状態が回復し、横浜FCからオファーが届いた。「そこはもう、お世話になろうかと思って」現在に至る。

 来季の去就はまだ不透明だ。「こればかりはどうなるか分からない」と思案する伊藤が、何度目かのJ1復帰を誓う横浜FCで奮闘する姿を見てみたい。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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