徳島内定MF高田優は“独特の間”で敵を翻弄。「めちゃくちゃ華やかでカッコ良い」静学10番の系譜を継ぐ超技巧派が、逆転優勝に望みつなぐ決勝弾

2023年12月01日 安藤隆人

「神田が来るぞ」の声を聞き逃さず

磐田U-18戦で値千金の決勝点を決めた高田。状況を見極め、自慢の左足でゴールネットを揺らした。写真:安藤隆人

 静岡学園の10番を背負う選手は、なぜこうも毎回特長的で、魅力的な選手が多いのか。

 大島僚太、旗手怜央などが代表格で、近年で言えば一昨年の古川陽介、昨年の高橋隆大は2人とも高卒でプロに進んでいる。今年度の俊英も、同じ道を辿る。徳島ヴォルティス内定のMF高田優だ

 179センチのサイズで、卓越した足もとのテクニックと左足の高精度キックを誇り、視野も広く、右サイドハーフやトップ下をこなす。とりわけ"独特の間"が面白い。

 ボールを持つ前からよく周りを見ている。そしてボールが来ると脱力した状態で足もとにピタリと収め、細かいボールタッチから相手を牽制し、動いた瞬間に股抜きやダブルタッチで逆をついたり、浮き球のボールでパスや突破を仕掛けたりする。

「ピッチ上で見る場所はたくさんあります。ボールを受ける前には相手の寄せ方を見ています。相手の角度や重心を見て、トラップで逆を突こうとか、仕掛けるふりをして後ろにあるスペースに落とそうとか、ダイレクトで叩いてワンツーしようとか、いろいろなイメージを用意しておきます。

 ボールを足もとで受けた時は、なるべく相手に向かってドリブルで突っかけて、あとは重心とか目線を見ながら、かつ周りを見ながら仕掛けます。前に仕掛けた時は止まることなくそのまま行きたいので、事前のイメージと相手の状態を見ながら抜き方を決めています」
 
 高田が見えているピッチ上の世界。ここまで見えて、考えて、イメージを創出しているからこそ、判断する直前まで選択肢を持ち、時には一度決めた選択肢を瞬時に変更できる。それが周りからすれば、相手を翻弄したり、手玉に取ったりする独特の間に映るのだろう。

 プレミアリーグWEST第21節・ジュビロ磐田U-18戦の取材に行くと、相変わらずの独特の間で、攻撃のリズムを作り出す姿があった。前半、1点のリードを許すが、高田は表情を変えずに、常に周りを見ていた。

 そして74分に怪我から復帰したエースストライカー・神田奏真がピッチサイドに準備すると、磐田U-18の選手から「神田が来るぞ」という声が出ていたのを高田は聞き逃さなかった。

「入る前からかなり神田を警戒していたのが分かりました。実際に試合が始まると、神田に複数の選手が行っていたし、ディフェンスラインも下がってきた。だんだん僕が前向きにプレーできるエリアが広がったので、『これは必ずチャンスが来るな』と思って準備しておきました」

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