横浜FCの伊藤翔が伝えた「プロとしての姿勢」。降格濃厚でも無様な終わり方は御免。「君はどういう気概の人間なんだと試されている感じがする」

2023年11月30日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「よく盛り返した。だから悔しい」

前線で攻守に献身的なプレーを見せる伊藤。残留は「現実的には厳しい」が、最後の最後まで力の限りを尽くす。写真:福冨倖希

 練習前のミーティング。監督に促されて、言葉に想いを乗せた。

「プロとしての姿勢をどれだけ示せるか」

 横浜FCはJ1最終戦で、鹿島アントラーズと敵地で相まみえる。勝点29で最下位。17位の柏レイソルは同32。最後に勝点で並ぶことはできても、得失点差"-12"を覆すのは...伊藤翔も「現実的には厳しい」と受け止めている。

 それでも、最後まで戦い抜く覚悟だ。「降格がほぼほぼ濃厚だからといって、いきなり0-5で負けてもいいのかっていう話にもなる」。無様な終わり方だけは御免。プロである限り、目の前の試合で勝利を目ざすだけだ。

「みんなも現実をだんだんと受け止めてきているだろうし。空元気でやろうっていうのも、ちょっと違う。なんて言うんだろう...一心でやっていると思う。モチベーション的には難しいかもしれないけど、なんとか振り絞って」

 鹿島戦に向けた準備も、大事な時間になると強調する。

「みんなのサッカー人生が今週で終わるわけではない。こういう難しい一週間をどういうふうに過ごすか。自分はやったぞ、やれたぞって。一週間、難しいけど、俺はやれたぞっていうのを、自分の中でちゃんとしたラインを見つけてやり抜く。

"もうちょっとできたかな"なのか、"いつもと変わらずやることをやった"と自負できるかは、今後のサッカー人生に大きく関わってくる。ここで力を出せなければ、大事な試合で力を出せなかったり、とか。今後につながっていくと思うから、無駄な一日じゃない」
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 フットボーラーの本質を問われる一週間になるのか? 35歳のベテランFWは同調しつつ、こうも言う。

「フットボーラーとしてももちろんそうだし、人間としてもそう。君はどういう人間なんだってことを聞かれている一週間。ピッチの上でね。もちろん、フットボーラーとして、スキルがどうとか、足が速いとか、身体が強いとか、そういうこともあるけど、君はどういう気概の人間なんだってことを試されている感じがしますね」

 どれだけ苦しい状況でも、前を向いて戦えるか。逆境をバネに、さらなる成長への一歩を踏み出せるか。クラブとしても、ひとりの選手としても。

「この先という意味では、クラブも少しずつ階段を上っていくしかないと思う。こういうことを何回も繰り返して、悔しい想いも、嬉しい想いもして。

 今シーズンは最初、全然勝てなかったけど、よくここまで盛り返した。上位チームにも勝ったりとか、力がまったくないわけじゃない。J1で十分に戦える。

 だからこそ悔しいというか、もったいないんだけど、こうやってクラブとしても大きくなっていくはずだし、選手はこの状況をどう感じて、どういうふうに自分のサッカー人生を構築していくかを考える機会になると思う」

 最後の鹿島戦。横浜FCはいかなる戦いぶりで今季の幕を下ろすのか。プライドを懸けた、熱いファイトを期待したい。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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