「俺以外に選択肢がないからどかした」AZ菅原由勢が垣間見せたFKキッカーとしての強い自負。「右足は武器。もっと怖い武器にしていきたい」【現地発】

2023年11月27日 中田徹

AZは3位に浮上。菅原は12試合で4アシストのハイペース

好調AZで重要な役回りを演じる菅原。充実の一途を辿る。(C)Getty Images

 11月26日、AZはフォレンダム相手に2点リードで迎えた57分、絶好の場所でFKを得た。

 キッカーの菅原由勢はゴールに向けて左手をかざして照準を定め、左隅を狙ってFKを蹴ったもののコースがやや甘く、GK長田澪(現地ではミオ・バックハウス)に弾かれた。リバウンドを拾ったFWルベン・ファン・ボメルのシュートは左ポストに嫌われ、そのこぼれ球をDFマルティンス・インディが詰めて3−0に。これが最終スコアとなり、AZはトゥベンテを抜いて3位に浮上した。
 
「(長田に)見せ場を作ろうと止めやすいほうに蹴りましたけど、(AZに得点が)入っちゃったんで申し訳ない」とジョークで場の雰囲気を和ませてから、菅原はすぐに真顔でこう続けた。

「得点につながったのは、チームの結果としてはいいこと。しかし、あれを直接決められるよう、まだまだ練習が必要です」

 このFKを蹴る直前、チームメイトの一人が蹴りたそうに菅原の近くに立ったが、一言二言声をかけるとすっとどいた。「俺以外の選択肢がないからどかしただけです」と菅原。

「右足は僕自身も武器だと思っています。これからもっと怖い武器にしていきたい。僕が『蹴りたい』と言うと蹴らしてもらえる。僕の右足は(チームから)信頼されている。それに結果で応えないといけません」
 
 フォレンダム戦の菅原は"武器"である右足を操って、何度もビッグチャンスを創出した。特に7分、GKライアンの縦フィードを中盤で受けて、自陣からロングスルーパスで右ウイングのポクに長田との1対1の場面を作ったシーンは秀逸。9分には菅原のクロスをMFワイナンスがフリーで受けたがシュートは枠を越えていった。

 今季の菅原は12試合で4アシスト。キャリアハイだった昨季の8アシストを大きく上回るペースで"目に見える結果"を残している。しかしフォレンダム戦のように100%のチャンスを創出してもアシストが付かない場面が多く、チームへの貢献度には数字以上のものがある。

 かつて不安視されていた守備も高みで安定している。フォレンダム戦の前半アディショナルタイムにはオーストラリア代表の快速ウインガー、ガラン・クオルがカウンターから抜け出そうとした瞬間に生まれた隙を突き、ハードタックルでストップ。このシーンには、パスカル・ヤンセン監督も拍手を贈っていた。

【PHOTO】日本代表のシリア戦出場16選手&監督の採点・寸評。スコアラーと指揮官に7点台の高評価。MOMは4Aの14番

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