シリア戦で3ゴール演出。2023年森保ジャパン“最大の発見”は菅原由勢だ。10戦中7試合でスタメン抜擢。代表史上最強の右SBに――

2023年11月22日 元川悦子

巧みなポジショニングと的確な判断が光る

シリア戦で攻守に際立つプレーを見せた菅原。セットプレーで嬉しい代表初ゴールも決めた。(C)Getty Images

 11月16日の2026年北中米ワールドカップ・アジア2次予選初戦のミャンマー戦(5-0)で白星スタートした後、中立地サウジアラビアのジッダに移動し、中4日を経て21日のシリア戦を迎えた日本代表。

 今回は三笘薫(ブライトン)や鎌田大地(ラツィオ)ら複数の主力級が不在だったが、森保一監督は最初からターンオーバーをしつつ2試合を乗り切る構えだった。ミャンマー戦から谷口彰悟(アル・ラーヤン)と上田綺世(フェイエノールト)を除く9人を入れ替え、重要なシリア戦に臨んだ。

 序盤こそ相手の守備ブロックに苦しんだ日本だったが、徐々に右サイドを起点に局面を打開し始める。円熟味を増しつつある伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)と菅原由勢(AZ)の縦関係に、トップ下の久保建英(レアル・ソシエダ)が絡み、ギャップを突こうと試みたことで、4-1-4-1布陣の相手にも綻びが生じていった。

 32分の久保の先制点、40分の上田のチーム3点目は、まさに3人の好連係がもたらしたもの。どちらも菅原の巧みなポジショニングと的確な判断が光っていた。

 前者は左サイドの浅野拓磨(ボーフム)と伊藤洋輝(シュツットガルト)がつないでいる間にボランチの位置に上がり、右の伊東に配球。久保が受けると、ペナルティエリア右外から思い切ってミドルを決める形だった。

 久保がシュートを放った際も、菅原はエリア内に侵入し、こぼれ球に備えていた。「行く時は思い切って行く」という大胆さが色濃く出ていたと言っていい。

 後者も久保のスローインを受け、久保に預けてタッチライン際を走り抜け、DFを引きつけた。その後、伊東→菅原→久保と渡り、そこから縦に抜け出した伊東にスルーパスが通ると、最後はクロスを上田が決めるという流れるようなゴールパターンだった。

【PHOTO】日本代表のシリア戦出場16選手&監督の採点・寸評。スコアラーと指揮官に7点台の高評価。MOMは4Aの14番
 これらの場面に象徴される通り、菅原は大外に構えているだけでなく、味方と相手を見ながら中に絞るなど、的確に位置取りを変化させていた。「偽サイドバック」と言われるボランチに上がって攻撃参加するプレーも再三見せ、インテリジェンスの高さも印象付けた。

 森保監督は「AZに赴いてからのハイレベルな経験値が彼の武器」と語っていたことがあったが、数々のビッグクラブとの試合を通して自分が何をすべきか、どこに動くべきかが自然と読めるようになったのだろう。

 名古屋グランパスU-15に所属した中学生の頃から年代別代表を経験し、インドやインドネシア、ウズベキスタンなどアジア各国を転戦し、劣悪な環境の中でタフに戦い抜いてきたキャリアも、精神的な余裕につながっているはずだ。

 かつて内田篤人も鹿島を率いたオズワルド・オリヴェイラ監督から「判断のミスがない選手」と評されたが、菅原も同じようなストロングを持ち合わせている。その武器に磨きをかけているのも心強い。だからこそ、2023年の代表10戦中7試合でスタメンに抜擢され、チームの勝利に貢献しているのだ。
 

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