【ビッグクラブの回顧録】“あの時”のユナイテッドを振り返る vol.14~2003-04シーズン ~

2016年03月01日 サッカーダイジェストWeb編集部

ベッカム退団の後遺症に苦しめられたシーズン。

プレシーズンでユナイテッドの面々を類稀なテクニックで翻弄し、ファーガソンのお眼鏡に適ったC・ロナウド。ポルトガルの若き天才はベッカムの後継者として栄光の背番号7を背負った。 (C) Getty Images

 2002-03シーズン終了後、クラブの広告塔でもあったデイビッド・ベッカムがレアル・マドリーに移籍。世界中を驚かせたビッグスターの退団によってユナイテッドの右サイドは空席となり、シーズンを通して彼の幻影に悩まされることとなる。
 
 アレックス・ファーガソンは、開幕前にベッカムの後釜として、プレシーズンで目星をつけた新鋭のクリスチアーノ・ロナウドをスポルティングから獲得した。
 
 さらにナントからエリック・ジェンバ=ジェンバも補強し、中盤を手厚くした。ちなみにこの時、指揮官はオレ・グンナー・スールシャールの右サイド起用も構想に入れていたという。
 
 しかしベッカムの抜けた穴は、緊急補強では埋まるほど小さくなかった。
 
 背番号7を受け継ぎ、正統後継者と見られていた18歳のC・ロナウドは、若さからか独善的なプレーを繰り返し、頻繁に右サイドで起用されたジェンバ=ジェンバも見せ場なく、周囲を失望させた。
 
 これまで大きな武器となっていた、一発で流れを変える正確無比なクロスボールの供給者がいなくなった影響からか、ゴールハンターのルート・ファン・ニステルローイも鋭さを失い、公式戦総得点数が前年比で3割減と低迷した。
 
 悪い流れに輪をかけるように、2004年の1月にはドーピング検査をすっぽかしたリオ・ファーディナンドが8か月の長期出場停止に……。大黒柱を失った守備陣は浮き足立ち、ミスから自滅するシーンを連発するなど、精彩を欠いた。
 
 失速していくユナイテッドに取って変わり、このシーズンの覇権を奪取したのはアーセン・ヴェンゲル率いる"The Invincibles(無敵のチーム)"アーセナルだった。
 
 パトリック・ヴィエラ、ロベール・ピレス、ティエリ・アンリらヴェンゲルの秘蔵っ子が円熟味を増し、落ち着いた大人のチームへと成長したアーセナルは、序盤戦から首位を快走し、1888-89シーズンのプレストン以来、115年ぶりとなる無敗でリーグを制した。
 
 アーセナルだけでなく、チェルシーにも追い抜かれるなど、ユナイテッドはロンドン勢の後塵を拝することとなった。
 
 カップ戦でも、決勝でミルウォールを3-0で下して意地の優勝を果たしたFAカップ以外は、いずれも早期敗退(リーグカップは4回戦敗退、チャンピオンズ・リーグはベスト16止まり)を喫し、地味な印象を残して不本意なシーズンを終了した。
 
◎2003-04シーズン成績
リーグ:3位(23勝6分け9敗・64得点35失点)
FAカップ:優勝(対ミルウォール)
リーグカップ(ワージントンカップ):4回戦敗退(対WBA)
チャンピオンズ・リーグ:ベスト16(対ポルト)
 
チーム内得点ランキング(プレミアリーグ):ファン・ニステルローイ(20点)、スコールズ(9点)、サハ(7点)、ギグス(7点)、フォルラン(4点)、C・ロナウド(4点)、キーン(3点)、ベリオン(2点)、クレベルソン(2点)、G・ネビル(2点)、オシェイ(2点)、バット(1点)
 
◎主なトランスファー
◇IN
GK ハワード(←メトロ・スターズ)
MF ジェンバ=ジェンバ(←ナント)
MF クレベルソン(←アトレチコPR)
MF C・ロナウド(←スポルティング)
FW サハ(←フルアム)
FW ベリオン(←サンダーランド)
 
◇OUT
GK バルテス(→マルセイユ)
MF ベッカム(→R・マドリー)
MF ヴェロン(→チェルシー)
 
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