「欲だらけなんですよ、世の中は」それでも酒井高徳がサッカー界で生き残れる秘訣「簡単なようで、簡単ではない」

2023年11月27日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

怪我への恐怖心は?

”長寿の秘訣”について語ってくれた酒井。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 フットボーラー=仕事という観点から、選手の本音を聞き出す企画だ。子どもたちの憧れであるプロフットボーラーは、実は不安定で過酷な職業でもあり、そうした側面から見えてくる現実も伝えたい。今回は【職業:プロフットボーラー】酒井高徳編の最終章、パート5だ。

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 才能だけでは生き残れないプロサッカー界。その世界を生き抜くための術についても、酒井高徳選手は持論を展開した。

「第一に健康体であること。これは本人の頑張りだけではどうしようもできない部分があって、運に左右されるところもあります。あとは、練習に費やす時間、シーズンを戦うための時間など多くの犠牲を払いながら、向上心を持ち続けること。僕がここまで歩んできたサッカー人生を振り返ると、そうなりますね。自分を犠牲にできる、健康体を維持するための知識を身に付ける、ずっと上を目指す、この3つは僕の中で大事な要素になっています」

 健康第一。確かにプロフットボーラーは身体が資本の職業だが、中には不運な病気や怪我で本人の意思に関係なくキャリアを断念せざるを得ないケースもある。常日頃から怪我の恐怖と戦うわけだが、それについて酒井選手ははっきりとこう言った。「恐怖はないです」と。

「怪我をするときはしちゃうので。ただ、しないための準備はもちろんしていますよ。悔いがないように。怪我をした時に心当たりがあってはダメなんです。不摂生な生活をすれば自分に返ってくるという覚悟があるのか、リスクを分かっているのか。そこを理解したうえで準備しているのなら好きなことをしていいと思いますが、大体の人は『あ~、不摂生がたたった』となる。しないための準備をできるかがトップアスリートの条件のひとつだと自分は考えています」

 怪我をしないための準備を実践するのは確かに相当な覚悟がいる。酒井選手も「簡単なようで、簡単ではない」と言う。

「これは意識の問題でもあるので、アスリートとか社会人とか関係なく、人としての部分。僕自身、怪我をした時に後悔したくないから、ならばケアできることは徹底的にやる。それで負傷してしまったら仕方ない。そういう考え方ですよね」
 
 だからか、と勝手に納得する。この日も、酒井選手は練習後に何時間も身体のケアに費やしている。後悔しないための時間。それを理解できたから納得したのだ。

 身体の頑丈さを売りにする酒井選手は「今年はちょっと怪我が多くて、防ぎようのないものもあった」と話すが、"準備の積み重ね"は続けている。

「そこは一番大事なところ。準備は常にできているスタンスで試合や練習をやっているので、恐怖心を持ったことはないです」

 これを受け、「欲や誘惑に流されないのは凄いですね」と投げかける。すると、「欲だらけなんですよ、世の中は」と酒井選手は反応した。

「さっきも言ったとおり、我慢して犠牲を払えるか、ここがすごく大事なところです。ジャンクフードを食べたいけど、やっぱりやめとくかとか。例えばサッカー選手にとってジャンクフードは必要なのか、そういう側面で物事を考えないとダメです。食べたいものを好きな時に好きなだけ食べる、これは明らかに欲に負けている。そこに気付いて、自制できるか。結局は犠牲を払えるかでその人のサッカー人生は決まると思います。僕は後悔したくないから、そのための準備に余念はありません」

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