【トリノ戦の本田圭佑】大きな意義がある「直接FKのキッカー」。チームメイトの信頼と己への自信の表われだ

2016年02月28日 白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

いつも譲っていたボナベントゥーラと何やら言葉を交わして。

ボナベントゥーラを差し置いて直接FKを蹴った本田。チーム内で揺るぎない信頼を掴んだ何よりの証拠だろう。(C)Getty Images

 1-0で勝利した2月27日のトリノ戦(セリエA27節)、26分のシーンだった。ゴールまで25メートルのやや右側の位置で直接FKを獲得したミランは、ジャコモ・ボナベントゥーラと本田圭佑がボールの前に立ち、何やら言葉を交わす。
 
 蹴ったのは本田。鋭いボールはゴール左隅に飛ぶ。しかし、クロスバーに弾かれる。あと数センチずれていれば、ゴールネットを揺らしていたに違いない紙一重の一撃だった。
 
 ミランは43分には同じくゴールまで25メートル、ほぼ正面の位置で再び直接FKのチャンスを得る。これも本田とボナベントゥーラがボールの前に構えて、やはり本田が蹴った。しかし、今度は壁に阻まれた。
 
 この意義はかなり大きい。本田は昨シーズンこそ直接FKを何度も蹴ったが、今シーズンはほとんどの場面でボナベントゥーラやマリオ・バロテッリにキッカーを譲ってきた。ちなみに、両者ともここまで直接FKで1ゴールずつを挙げている。
 
 CKは蹴ってきたし、FKの場面でもボールの前に立っているので、チーム内でプレースキッカーのひとりに指名されていたのは間違いない。しかし、右利きのボナベントゥーラやバロテッリよりも、左利きの本田のほうがゴールを狙いやすい位置からの直接FKも、"囮"になる場面が今シーズンはほとんどだったのだ。
 
 しかしトリノ戦では、二度あった直接FKのチャンスでいずれもキッカーを担った。これは本田が直接FKのチャンスを任せてもらえるほどチーム内で信頼を掴んだ証拠だし、本人にも自信と積極性が芽生えているからだろう。
 
【試合レポート】ミラン 1-0 トリノ

 実際、この日の本田はコンディションの良さが身体のキレに表われており、攻守で効いていた。ミランが4-4-2、トリノが3-5-2のシステムを敷いたため、対面したWBのブルーノ・ペレスに対して右SBのイニャツィオ・アバーテと連携すれば2対1の有利な関係を作れたこともあり、攻撃ではビルドアップの段階からボールによく絡めており、その後の崩しからフィニッシュにも積極的に関与。クロスと枠内シュートは、いずれも両チーム最多の3本を記録した。
 
 それでいて、相変わらず守備面でも高い貢献を見せる。トリノが攻め込みミランが引いた局面ではアバーテの手前まで戻って守備ブロックに参加し、速攻を食らっても素早いネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)から全速力で帰陣。後半半ば以降はトラップミスやパスミスが増えるなどやや息切れしたが、それでも決して足を止めなかった。チーム2位の10.977kmという走行距離に、それは如実に表われている。

次ページ試合後には自信に満ちたコメントを残した。

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