連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】敗戦の中にも希望あり? 柏の新外国人オリヴェイラは大当たりか

2016年02月28日 熊崎敬

懐の深いドリブルは、かつて浦和で活躍したワシントンを彷彿と。

粘り強いボールキープ、懐の深いドリブルなど、随所にスケールの大きさを見せた柏のオリヴェイラ。チームは敗れたものの、今後の活躍を予感させる上々のデビュー戦だった。 (C) SOCCER DIGEST

 23年目のJリーグが開幕した。
 
 いつのシーズンも、私は開幕後しばらくはできるだけ多くのチームを観ることを心掛けている。今年はどこを追いかけると面白そうか、目星をつけるためだ。
 
 開幕戦を見終えたいま、今年は柏に行く機会が増えるのかな、という気がしている。浦和に1-2と敗れはしたが、しばしば見せた縦への鋭い攻撃が私のツボにはまったからだ。
 
 そんな柏の中でも、とりわけ強い印象を残したのが新加入のストライカー、ディエゴ・オリヴェイラだ。背番号11にボールが渡るたびに、日立台のテンションは高まった。
 
 張り切りすぎて73分に足が攣り、ピッチを去る羽目になったが、オリヴェイラはスケールの大きさを随所に見せた。
 
 40分には最後にボールを失ったものの、浦和3人を相手に粘り強いキープを見せた。
 この場面は、2002年日韓ワールドカップの名シーンを見るかのようだった。憶えている人もいるだろう。時間稼ぎに入ろうとするブラジルのデニウソンを、鬼の形相でトルコ人4人が追い回したシーンだ。
 
 64分にはカウンターから右サイドを駆け上がり、大谷の同点ゴールをお膳立てした。一度は柏木、森脇に捕まり、ボールを失うかに見えたが、そこから深い切り返しで柏木を置き去りにすると、さらには森脇をも振り切って中央に折り返す。
 この懐の深いドリブルは、かつて浦和で活躍したワシントンを彷彿とさせるものがあった。
 
 69分には自陣で浮き球を受けるとダイナミックに反転して敵を外し、広大なスペースに正確なロングパスを配球した。このプレーでは強さだけでなく、巧さや視野の広さも強く印象づけた。
 
 このオリヴェイラには多くの場合、槙野が対峙したが、その槙野の充実した表情も印象深い。自分の力を引き出してくれる好敵手に出会えた喜びが、そうさせていたのだろう。こういう対決が増えると、選手は確実に成長する。
 
 開幕戦から好ゲームが見られて、「マイ・フェイバリット」になりそうな外国人も発見できた。2016年のJリーグは、いつになく面白くなるかもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
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