【広島】王者の“宿命”にどう立ち向かうか。「中央の連係」を見出せずして連覇はない

2016年02月28日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「鍵は中の連係。これを乗り越えないと上には行けない」(森﨑和)

現在、前線3人のファーストチョイスは佐藤(左)、柴﨑(中央)、茶島(右)。その他の組み合わせを含め、中央での連係プレーでいかに崩していくかがリーグ連覇への鍵を握る。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 中盤で縦パスを奪い、カウンターにつなげる――。本来、広島が得意とする形で、川崎に決勝点を与えてしまった。「いつもなら考えられないようなイージーミスが多かった」(佐藤寿人)のも一因だが、森保監督が「相手はウチを研究している」と振り返ったように、チームの心臓である青山敏弘へのクサビを引っ掛けられた失点シーンをはじめ、青山は試合を通してターゲットにされ続け、リズムが思うように生まれなかったのである。

マッチレポート|広島 0-1 川崎

【PHOTOハイライト】広島×川崎

 各チームのマークが厳しいのは王者の"宿命"であり、サッカースタイルがブレない広島の場合、対戦相手の対策が一層顕著だ。昨季はサイド攻撃でペースを掴みながら、ドウグラスの卓越した個の力で局面を打開して接戦をものにできたが、今季はひとりでゴールをこじ開けられる選手はいない。的をサイドだけに絞らせないためにも、コンビネーション――とりわけ前線3人(1トップ+2シャドー)の中央での崩しが不可欠になってくる。
 
 川崎戦では、ゼロックス・スーパーカップと同じ佐藤、柴﨑晃誠、茶島雄介の組み合わせが取られた。「ウチは前線に(背が)高い選手がいないので、単純にクロスを上げるだけだとなかなかチャンスに結びつかない。外でボールは持てるので、そこからもうひと工夫していかないと点は取れない」と、森﨑和幸も相手を上回る一手の必要性を説く。
 
「鍵は中の連係。前3人の距離感をもっと近くして、3人で崩せるパターンにトライしていかないといけない。フィニッシュまでいかなくても、中の選択肢があれば外が開いてくるので、サイドの選手がそのままシュートを打つ形もできてくる。今はコンビネーションを作っている段階だけど、これを乗り越えないと上には行けないと思う」(森﨑和)
 
 もっとも、昨季の佐藤、ドウグラス、柴﨑のトライアングルも開幕から機能していたわけではなく、シャドーのふたりが固定されてから徐々にコンビネーションを築いていった。茶島も、相手の対策を踏まえたうえで、少しずつイメージができ始めていると語る。
 
「良い形でゼロックスを勝って、ある程度感じは掴んでいます。川崎のように相手が中を固めてくるなら、サイドからのクロスの精度、クロスに入っていくプレーを追求していかないといけないし、個人的には裏に抜け出したり、中盤で前を向いた時にもっと脅威を与えるプレーをしたい」
 
 2013年以来の開幕黒星スタートとなったが、3月1日はACL(FCソウル戦)、その5日後にはリーグ戦(名古屋戦)と連戦は続く。十分な練習時間が取れないなかで、試合でどれだけクオリティを上げていくか。決して簡単なミッションではないが、ここ4年で3度優勝を飾っている彼らの経験をもってすれば、きっとクリアできるはずだ。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
 
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