【山形】在籍したクラブは実に"11"。流浪のストライカー大黒将志が生き残れる理由

2016年02月28日 雨堤俊祐

いまだ衰えない向上心とゴールへの貪欲な姿勢。

昨季在籍した京都では、限られた出場時間で16得点を挙げた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 2月24日、大黒将志の山形への期限付き移籍が発表された。
 
 京都では2年間プレーし、リーグ戦通算82試合・42得点。2試合に1ゴールという高いアベレージを記録した。加入1年目の14年シーズンには、26ゴールを挙げてJ2得点王を獲得するなど、35歳を迎えた今もなお、パフォーマンスは錆び付くどころか、むしろ凄みを増している印象さえある。
 
 そんな大黒がこれまで在籍したクラブは、国内外を合わせて「11」。下部組織で育ったG大阪を除いて、所属したクラブを1年もしくは2年で離れながら、それぞれのクラブでゴールという結果を残してきた流浪のストライカーだ。行く先々で重宝される理由――。それは、類まれな得点力の高さに他ならない。
 
 ボールを受ける前の動き出しと、勝負強さは群を抜く、相手DFとの駆け引きを繰り返すなかで生まれるスペースや死角に入り込む動きは、分っていても止められない。
 
 そして、目を引くのが天性の嗅覚だ。ゴールを奪える選手はよく"得点感覚がある"、"ゴールのにおいを嗅ぎ分ける"と言われる。大黒の場合もその言葉が当てはまるが、そこに可能性が低くてもトライすること、それが無駄足に終わろうとも何度でも狙い続ける実行力が加わる。
 
 言葉にすれば簡単だが、心身が磨り減るピッチの中で90分間やり続けることは簡単ではない。「もしもルーズボールがこぼれてきたら」、「もしかして相手がミスをしたら」……。ペナルティボックス付近に存在する"たられば"の中から、少しでもゴールの可能性がある選択肢を実行し続ける。
 
 向上心とゴールへの貪欲な姿勢――。まさにこのスタンスこそが、ベテランの域になっても得点を取り続けられる理由だろう。若手に負けじと居残り練習でシュートを打ち込んで感覚を養い、さらに世界各国のゴール集の映像を見ることで様々な得点パターンのイメージを膨らませて、試合に挑む。ゴールへのこだわりはひと一倍強いのだ。
 
 さらに言えば、日々の鍛練の積み重ねがあるからこそ、時にゴールマウスが見えていない状況でも「なんとなくゴールの方向はわかっている」(大黒)と身体に染み付いた感覚を信じて、シュートをゴール枠内へ飛ばせるのだろう。

次ページ指揮官が求めるスタイルとの噛み合わせの悪さが、京都退団への引き金に。

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