【大宮】塩田仁史インタビュー|「持っている」ベテランGKの達観と葛藤(後編)

2016年02月27日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「35歳を前にして、やっと肩の力が抜けてきた」

「結果が出なかったら代えられる」。出場した時はその感覚を常に持ちながら、それでもプレッシャーを楽しめている。写真提供:大宮アルディージャ

 目前に迫った開幕戦に、強い思い入れを持って臨む選手がいる。昨季のJ2で優勝し、1年でJ1復帰を果たした大宮に所属する塩田仁史だ。対戦相手は古巣のFC東京、しかも舞台は慣れ親しんだ味の素スタジアム。これで燃えないはずがない。
 
 なにかに引き寄せられるように迎える当日へ向けて、どんな心境で過ごしているのか。昨シーズンを振り返りながら、ピッチ内外で感じたこと、「持っている」の意味、今も心の奥底にある葛藤を前編・後編に分けて紹介する。(編集部・注/インタビューは2月25日に実施)

【大宮】塩田仁史インタビュー|「持っている」ベテランGKの達観と葛藤(前編)
 
――◆――◆――
 
――「チームのために」とは、普段の練習から一切の妥協をしないことだと思います。サブ組の"スタメンを突き上げる姿勢"がチームの根底を支えたり、好調を作っているのかもしれません。
 
 それはあります。昨季の大宮がJ2で勝ち抜けたのは、試合に出ている選手に「結果が出なかったら代えられる」という感覚があったからでしょう。だからこそ勝つことを追求していた。
 
 強いクラブの証拠だし、僕も常にそういう気持ちで戦っています。ただ、気合いが入り過ぎると大切なものが見えなくなる。今季はプレッシャーも楽しめていますから、バランスが取れているというか、35歳を前にして、やっと肩の力が抜けてきた。
 
「あと何年プレーできるか分からない」なんて、自分のゴール地点が見えてくると、なんとなく楽しもうという気持ちと、若い頃と違ったストイックさが出てくるんです。アウェーの北九州戦の時に(原)一樹と話したんですが、今は彼も物凄くストイックにサッカーをしているみたいなんです。グラウンドに最後まで残って走ったり。「シオさん、先が見えてくると自分がどこまでやれるのか限界が知りたくなる」って言うんです。
 
 肉体を研ぎ澄ましたくなる。今までの自分のスタンダード、今までの限界から、「もうひとつ先のベストがあるんじゃないか」と思い始めるんですかね。僕も「あと何年間やれるんだ」と考えた時に、自分の理想のさらに上を目指してみたくなった。そうじゃないと衰退してくしかないし、その会話がひとつの転機でしたね。ロングランもよくするようになって、筋トレも一からトレーナーとやっています。コンディションは若い時よりいい。

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