森保ジャパン、アジア杯のキーマンは? いないと攻守ともに不具合が生じる。課題はバックアッパーの不在 【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2023年11月03日 小宮良之

アジア杯で勝ち上がるには守備の充実が求められる

好調の森保ジャパンを主将として牽引する遠藤(前列右端)。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 来年1月のアジアカップに向け、森保ジャパンのキーマンを一人だけ挙げるなら、リバプールに所属するMF遠藤航になるだろう。

 10月シリーズ、遠藤はカナダ、チュニジア戦に先発し、守備に安定をもたらしていた。彼が中盤で常に味方をカバーし、フィルターとして作用することによって、敵の攻撃力を半減以下に。守備が盤石になることで、自然に攻撃へ入ることもできた。

「いい守りがいい攻撃を作り出す」

 それこそ、石橋を叩いて渡る森保一監督の真骨頂と言えるだろう。

 カタールW杯まで、森保ジャパンは守備重視というよりも偏重で、攻守のバランスが悪かった。しかし、9月の欧州遠征でドイツを1-4で撃破した試合など、文句の付けようがない。選手一人一人が欧州で経験したプレーを還元できているのが大きく、必ずしも指揮官の采配の変化とは言えないが、攻守一体で強敵を押し込んだ事実は歴史的だ。

 その中心にいたのが、遠藤と言える。

【動画】現地メディアも絶賛!遠藤のリバプール初ゴール!
 遠藤はとにかく球際の勝負で負けない。ドイツ、ブンデスリーガでは「デュエル王」の称号を得ていたが、局面の勝利によって全体を好転させられる。だからと言って、インターセプトや1対1に特化することない。広くスペースを守ることができるし、何より周りと補完関係を作る能力に優れている。

 前線のプレスに対する反応は迅速で、相棒になるMFとは常に高さを変えることで有機性を生み出し、センターバックとのトライアングルも絶妙。そのバランス感覚は、歴代の日本代表でも長谷部誠に次ぐものだ。

 現時点では、遠藤のバックアッパーがいないのが課題と言えるかもしれない。

 守田英正、田中碧は近い仕事ができる。しかし、二人のベストは遠藤のような質朴なディフェンスをできる選手と組んで、一つ前のポジションで攻撃的にプレーすることだろう。他にJリーグから数人の選手を選んでいるが、能力的には遠く及ばない。事実、カナダ戦などは遠藤が交代で下がった途端に流れが悪くなって失点を喫している。唯一、スペイン2部ウエスカにいる橋本拳人は代役候補と言えるが...。

 アジア杯で勝ち上がるには、守備の充実が求められる。その点、遠藤の存在は欠かせない。攻守のへそにいる選手で、そこが揺らぐことで、守りも攻めも不具合を起こすことになるだろう。

 言うまでもないが、久保建英、三笘薫、鎌田大地などヨーロッパカップ戦を戦う面々は、日本サッカーが誇る攻撃陣である。W杯で上位に勝ち抜くにはキーマンとなる。しかしアジアの盟主になるため、わざわざ呼び戻すべきか。

 アジア杯では、森保ジャパンは遠藤中心で乗り切ることで、もう一つのフェーズに入る。それでこそ、森保監督の手腕も問えるだろう。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
 

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