アーセナル移籍後初の古巣対戦となったライス、かつての本拠地帰還にハマーズファンの反応は?【現地発】

2023年11月03日 スティーブ・マッケンジー

試合はウェストハムが3-1で勝利

古巣ウェストハム戦に57分から出場したライス。(C)Getty Images

 11月1日、私はウェストハムの本拠地ロンドン・スタジアムで行なわれたカラバオカップの4回戦・ウェストハム対アーセナルの試合を取材した。結果は前者が3-1で勝利し、準々決勝進出を決めた。

 ハマーズファンの私にとっては非常に素晴らしい勝利となった。そしてこの一戦で一番大きなトピックといえば、デクラン・ライスの帰還だ。

  彼はこの夏にウェストハムを退団し、イギリス人史上最高額となる1億500万ポンド(約192億円)の移籍金でアーセナルに加わった。フィオレンティーナを2-1で破り、クラブが43年ぶりのトロフィーを獲得した6月のヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)決勝が、ライスにとって最後の試合だった。

 彼は14歳の時からウェストハムの下部組織に在籍し、クラブの伝説となっていた。イングランドでは優秀な選手がクラブを去り、初めて古巣との対戦を迎える時に、どんな歓迎を受けるのかは、いろいろな要素に左右される。

 その選手がどのようにクラブを去ったのか、どれだけの期間在籍していたのか、クラブへの愛をどのように示したのか、そして去る時に何を話したのか。

 ウェストハムにクラブ史上最高額の移籍金を残したライスは、ハマーズファンから大歓迎を受けるだろう。おそらく本人も同じことを期待していたと思うし、古巣との対戦を楽しみにしていたはずだ。
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 ベンチスタートなったライスがピッチでウォーミングアップを始めると、ほとんど拍手喝采だったが、一部のファンからはブーイングが起こった。

 そして試合は57分になり、ようやくライスがピッチに登場した際にも、やはり拍手の中にはブーイングが混ざっていた。今の彼は、ライバルチームであるアーセナルでプレーする選手なのだから、それはある意味当然とも言える。

 ハマーズファンは、ライスのようにクラブに多大な貢献をした選手が相手にいたとしても、自分たちのチームを応援し、熱狂する。

 しかし、ライスにブーイングを浴びせている人たちは、彼がクラブのためにしてくれたすべてに感謝しているのは間違いない。彼らなりのリスペクトなのだ。

 ライスは試合終了後もピッチに残り、かつてのチームメイトや多くのスタッフと話をしていた。

 アーセナルを撃破し、ベスト8に駒を進めたウェストハムのデイビッド・モイーズ監督は、試合後の記者会見で「カップ戦では良いチームになりつつある」と語っていた。また今季も、昨シーズンのECLのようにエキサイティングなカップ戦の戦いが待っているが、今回はライスがいない。そして、私は直近の3試合で勝ちがないリーグ戦のほうが心配だ。

文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

著者プロフィール
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーター。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で出版した。

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