【水戸】新天地の得点力を大きく左右する33歳のレフティは、古巣・清水との対戦を待ちわびる

2016年02月23日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

ピッチに立って戦う責任感を強く噛み締めながら。

今オフに水戸への移籍を決断した兵働。自身5つ目のクラブでは背番号7を背負う。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 10年前に今の自分をどんな風に想像していたかと聞けば、「その時はやっているかどうかも分かんなかったから」と、彼独特の人懐っこい笑顔を浮かべる。
 
「だから、よくやっているなという面もある。ただ、年々サッカーに対してもっと上手くなりたいという気持ちはある。フィジカル的な部分はもしかしたら落ちてきているかもしれないけど、頭脳や思考は、若い選手にはない経験がある。そういうところで自分の力を発揮できればいい」

 兵働昭弘。5月に34歳を迎える左利きのMFは、自身にとって5つ目のクラブとなる水戸で新シーズンに挑むことになる。

 05年に筑波大を卒業後、清水に加入。1年目から出場機会を得ると、その後6シーズンに渡り、長谷川健太(当時・現G大阪監督)が率いる清水で主力として活躍を見せる。11年には柏に新天地を求め、12年からは千葉で3シーズンを過ごし、昨季は大分でプレーして、今オフに水戸への移籍を決めた。

「大学時代、(水戸の西ヶ谷隆之)監督に教わっていた縁もありますけど(編集部・注/筑波大時代にコーチと選手の関係)、この齢になってもオファーをくれたことに対して、すごく嬉しかったし、感謝しています」

 大分に残る選択肢もあった。移籍か、残留か。すぐに答えは出せなかった。後ろ髪を引かれる想いで、最終的には新たなクラブでチャレンジすることに決めた。

 そんな兵働に「サッカーを楽しめているか?」と投げかけると、少しだけ声を落として答える。

「まあ、難しいですよね。毎年、仕事だし。自分の人生もかかっているけど、いろんな人の人生もかかっている。それを背負って戦っているわけだから。去年、大分を降格させてしまって、すごく辛かった。サポーターの人たちはプレーできない。応援するしかない。それに対して、自分たちは結果として応えられなかった。だから……心の底から楽しめるかと言ったら、そうじゃないかもしれない」

 応援してくれる人たちを悲しませてしまったことで、兵働は今、改めてピッチに立って戦うことの責任感を強く噛み締めている。

 だからこそ、経験も実績も豊富な兵働には多くを期待したいと思う。プロとしての喜びや悲しみを、その身体に刻み込んできた男にしか果たせない責務があるはずだ。だが、当の本人には、良い意味で過剰な気負いはない。

「(水戸には)他にも経験豊富な選手がいるし、これからチームに中心になっていくであろう若い選手もいっぱいいる。そんなに自分がどうこうするとか、あんまり考えてはいない。ただ、チーム全員が気持ち良く、それぞれの良いところを出せるように、そういう雰囲気を作っていければ。あとは、チームがマイナスの方向に行きそうになれば、それを立ち切って、プラスに持って行けるようにサポートしたい」

 一歩引いた構えで、チームを下支えするスタンス。もっとも、実際のプレー面ではそうはいかないだろう。

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