【広島】「代表でも充実していたが…」新10番の“ジャガー”浅野拓磨が目指す高み

2016年02月15日 中野和也

「よりシュートの意識を強く持ってほしい」と森保監督。

リオ五輪予選で一気に知名度を高めた感のある浅野。各チームのマークもいっそう厳しくなるだろうが、さらなる高みを目指して突き進むだけだ。写真:紫熊倶楽部

 広島の新10番のお目見えとなった2月12日、浅野拓磨最大の見せ場は対町田戦の21分に訪れた。左サイドからスピードを駆使してジャガーが走る。走る。さらに走る。
 
 圧倒的なスピードの前に、高いラインをとっていた町田の守備陣はついていけない。外から中に切り込んだその瞬間、ゴールへのコースが完全に開いた。
 
 誰もが思った。 
「シュートだっ」
 
 だがここで、期待された「ジャガー・シュート」は炸裂せず。飛び込んできた茶島雄介にヒールパスを通せなかった。
 
 もちろん、「シュートと見せかけてのパス」が悪いわけではない。よりゴールの可能性が高い方を選択することは、決して悪くはない。だが、やるならば通さなければ「あのプレーは、後悔しました」(浅野)ということになる。
 
 森保監督も「彼に求めるのは得点。よりシュートの意識を強くもってほしい。もちろん、コンビネーションで崩すことも重要だけど、単独でも相手を崩していける選手なんだから」と「ストライカー・ジャガー」への期待を口にしていた。
 
 U-23日本代表での激闘から帰国し、休息は約1週間。決して十分とはいえない。蓄積疲労がリフレッシュされていないという状況は、正直心配ではある。シーズンが深まったなかで、クリアできていない疲労がどういう影響を及ぼすか。昨年の浅野の奮闘ぶりと大舞台の連続による心身の消耗を考えれば、「若いから大丈夫」とは言えない。
 
 だが、それでもやらなければならないのが、プロの世界である。日程に対しての検証・改革への努力は続けなければならないが、選手は立ち止まっているわけにはいかない。浅野には今季、JとACLとの両立が待っているし、その先には五輪もある。過密すぎるほどに過密。それでも、彼は怯まない。
 
「すべてのタイトルをとれる力が、広島にはある。自分のゴールでチームの勝利に関わり、ひとつでも多くのタイトルをとりたい。(U-23)代表でも充実していましたが、満足はできない。もっと高みを目指してやっていかないと」
 
 若者に「これでいい」という言葉など、不要なのだろう。
「もっとやれる」
「もっとできる」
 
 そんな言葉こそ、最高のプレゼント。特に今の浅野拓磨には、優しい評価よりも高い可能性を示してやる方が、未来を築く術となる。
 
 広島の新10番の愛称である「ジャガー」は、この年末年始で相当に浸透した。宮崎キャンプのファンサービスでも「ジャガーポーズをしてください」とリクエストされるのだが、その度にポーズをつくる浅野拓磨の笑顔に、サポーターはさらに癒やされる。こういう好漢だからこそ、順調に成長してほしいと心から願うのである。
 
取材・文:中野和也(フリーライター)
 
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