愛娘の前で決めた感動弾。キャプテンとして苦しみ続けた橘田健人が宿敵・蔚山を下すゴールを決めた意味【川崎】

2023年10月04日 本田健介(サッカーダイジェスト)

周囲への感謝の気持ちを乗せて

劇的すぎる決勝弾をあげた橘田。チームメイトに祝福される。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[ACLグループステージ2節]川崎1-0蔚山現代/10月3日/等々力陸上競技場

 川崎にとって韓国の蔚山現代はACLで何度も苦汁を飲まされてきた相手だ。通算成績は1勝4分(一度のPK負けを含む)4敗で2014年以来勝利がなかった。

 そして今大会、ジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)、パトゥム・ユナイテッド(タイ)とともに、川崎は再び蔚山と同じ組に振り分けられたのだ。

 アウェーでの初戦、ジョホール戦を1-0で制していた川崎は、リーグ戦の湘南戦(〇2-0)、新潟戦(●2-3)を挟み、悲願のACL制覇へまずひとつの大きな関門として蔚山戦に臨んだ。

 中2日での試合だった蔚山に対し、序盤からボールを保持した川崎だが、チャンスをなかなかモノにできない。それでも迎えた89分だった。

 ペナルティアーク付近で遠野大弥がボールを後方に落とすと、走り込んだのは橘田健人だった。右足を振り抜くと、ややアウトサイドに当てたようなボールは一直線にネットを揺らした。

【厳選ショット】キャプテン橘田健人が強烈ミドルで等々力劇場を巻き起こす!宿敵を撃破し2連勝!|ACL GS第2節 川崎1-0蔚山
 
 大卒3年目で今季からキャプテンに就任した男は、重圧もあったのだろう、ここ2年のような躍動感のあるプレーが鳴りを潜めていた。

 しかも世代交代を進めるチームは覇権奪回を目指したリーグ戦で大苦戦。中位を彷徨い、勝点を落とした試合後、キャプテンとして先頭に立ち、申し訳なさそうにサポーターへ挨拶に行く姿を目にするたび、なんとしても彼が笑顔になれる瞬間が訪れてほしいと願った人は多かったに違いない。

 それでも少しずつ、頭と身体を整えていくと、出足の早い守備が蘇り、強化を進めてきた攻撃面でも力を発揮するようになってきた。

 殻を破り"戻ってきた"感覚のある男が、長い間勝てずにいた蔚山を下す劇的なゴールを、悲願の初制覇を目指すACLの舞台で挙げるとは、なんともドラマチックすぎる展開だろう。

「(蔚山に対しては)チームとしても悔しい想いをしていましたし、個人としても悔しかったので、そういう相手に自分のゴールで勝てたのは嬉しいです」と振り返る橘田は、周囲への感謝を口にする。

 苦しかった時期、様々な人がそっと、何気なく背中を押してくれたという。

「ゴールを決められたから良かったとまだ言い切れませんが、ここまでやってこられたのも、チームメイトだったり、スタッフだったり、家族だったり、本当にいろんな人の支えがあってこそ。いろんな人に感謝したいです」

 この日のスタンドには、今年6月に誕生した愛娘と家族の姿があった。

「(試合が終わって)さっき連絡したら。(娘は)丁度起きていたみたいなんですよ」

 父として見せた初ゴール。今度の夢は一緒に選手入場することだという。

 様々なパワーを背に橘田は、今まで以上に力強くピッチを駆ける。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

「日本と全く違う。韓国はすごく…」齋藤学が海外との差を激白!豪州の野球人気度に衝撃「マナブ明日、野球見んだってさ!みたいな」

【川崎】鬼木達監督との長時間の"青空会議"は何をもたらしたのか。FC東京戦で橘田健人に見えた変化

瀬川祐輔の川崎での異質な挑戦。ベンチが続く日々も「今の環境が自分には良い」と語る理由とは【特別インタビュー/前編】
 

次ページ橘田の豪快なゴール

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事