現地紙コラムニストが綴る――武藤嘉紀のブンデス挑戦記「今回の怪我が夏の移籍に与える影響は小さくない」

2016年02月10日 ラインハルト・レーベルク

実戦復帰は7~8週間後か

ハノーファー戦で膝を傷めた武藤。手術こそ回避したものの、本格復帰は3月下旬にずれ込みそうだ。(C)Getty Images

 マインツの上層部の間では、ウインターブレイク中にこんな議論がなされていた。この冬に武藤嘉紀を引き抜かれてもやっていけるのか――。答は、もちろんナイン(ノー)だ。イングランドからの巨額オファーを徹底的に拒否し、この冬の流出は回避できた。

 だが、不運が襲い掛かる。1-0の勝利に終わったハノーファー戦(20節)で、武藤は右膝の外側側副靭帯を損傷。手術の必要なしとの診断を受けたが、当面は患部を固定しなければならず、ビルドアッププログラム(練習)を始められるのは4週間後とされた。となると、実戦復帰は7~8週間となるだろうか。「ヨッチ(武藤の愛称)は絶望してなどいない。もっと悪い結果もあり得たと分かっているからね」と、マルティン・シュミット監督は言う。

 マインツは今後、シャルケやレバークーゼン、バイエルン、そしてドルトムントと強豪との対戦が目白押しだが、そのすべてを武藤抜きで戦わなければならない。回復ぶりにもよるが、現実的な復帰の時期はアウェーのブレーメン戦(3月19日、27節)か、ホームでのアウグスブルク戦(4月2日、28節)だろう。武藤本人にとっても、クラブにとっても、大打撃だ。

 負傷したハノーファー戦で、武藤は決勝点に絡んだ。58分、1対1で負けたあとに、敵MFのマヌエル・シュミーデバッハにハードタックルをお見舞いし、イエローカードを頂戴した。この15分後に交代を告げられるまで、武藤は怪我をしている事実にまるで気づかなかったようだ。アドレナリンが出て、痛みを感じなくしたのだろう。

 ベンチに下がるや、苦悶の表情を浮かべた武藤。あまりにも運が悪い。来夏にあるかもしれないステップアップ移籍。国際的なショーウインドウで自己をアピールする機会を逸してしまったのだ。今シーズンの武藤に残されるのは、おそらく6~7試合程度だろう。
 

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