日本がゴールを決めるたびにアナウンサーは大興奮。W杯でドイツに1-7の歴史的大敗を喫したブラジルは、ドイツ戦の完勝をどう報じたか【現地発】

2023年09月29日 沢田啓明

「戦術的に洗練されていた」と絶賛

ドイツに完勝を収めた日本。ブラジルのメディアも総じてポジティブな反応だった。 (C)SOCCER DIGEST

 9月9日に日本代表が敵地でドイツ代表に圧勝したニュースは、ブラジルでも大きな話題となった。それには、いくつかの理由がある。
 
1、日本は昨年のワールドカップ・グループリーグでドイツとスペインを倒したが、試合内容は劣勢だった。しかし、今回は内容でもドイツを圧倒した。
 
2、ブラジルのメディアと国民は、ワールドカップで優勝した実績がある国しか強豪と認めない。日本はワールドカップを制覇していないが、昨年のワールドカップ以来、ドイツ、スペイン、再びドイツと、元世界王者と3戦して全勝だ。
 
3、2014年ワールドカップ準決勝で1-7という歴史的大敗を喫して以来、ドイツはブラジルにとって因縁の相手。その仇敵に連勝した日本は、国際Aマッチにおけるドイツとの対戦成績を2勝1分け1敗と勝ち越した。
 
 試合を中継したブラジルのテレビのアナウンサーは、日本が得点を挙げるたびに大興奮。終了のホイッスルが吹かれると、「日本がドイツを粉砕した!」と絶叫した。
 
 ブラジル国内のメディアも総じてポジティブな反応だった。「日本は積極的な守備でドイツの攻撃を封じると、伊東純也、三笘薫の両ウイングがサイドの攻防で圧倒。さらに後半、久保建英が効果的なプレーで多くの決定機を作り出した」、「森保一監督が4バックと3バックを試すなど、戦術的に洗練されていた」などと伝えている。
 
 ブラジル国民は、「2014年ワールドカップで味わった屈辱を払拭するには、同じワールドカップの舞台で7-1かそれ以上のスコアでドイツを叩きのめすしかない」と考えている。

 しかし、あの忌まわしい敗戦以降、ワールドカップはおろか強化試合でもリベンジの機会に恵まれていない。だからこそ、友好国の日本(ブラジルは大の親日国だ)が7ゴールではないにしても4ゴールを叩き込んで大勝した事実は、彼らの溜飲を下げた。
 
 今後、ブラジルで日本の評価がさらに高まるとすれば、それは当のセレソンを倒したときだろう。過去の対戦成績は、日本の2分け11敗。しかし、一部のブラジルメディアは「すでに日本は世界のどの強豪とも互角に戦える段階に達しつつある。セレソンに対してもコンプレックスを捨てて戦えば、勝利を収めるのは時間の問題」と警戒する。
 
 われわれ日本人は、その日が早く訪れるのを心待ちにしよう。
 
文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。
 
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