別次元の上手さ。アルゼンチン戦でインテリジェンスも見せつけた長谷川唯の欠点を探すほうが難しい【なでしこジャパン/コラム】

2023年09月23日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

思わず「うまっ」と呟いた視聴者もいたはず

アルゼンチン戦で大きな存在感を示した長谷川。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 2023年9月23日、なでしこジャパンが北九州スタジアムでアルゼンチン女子代表と対戦。パリ五輪予選前、最後の国際親善試合となった舞台で、8-0と圧勝した。

 4-3-3システムでスタートさせたなでしこジャパンは開始直後からエンジン全開。2分に田中美南が先制弾を蹴り込むと、10分には長谷川唯がPKで追加点を奪い、続く25分には高橋はながヘッドで、39分には長谷川が巧みな個人技でダメを押した。後半も攻撃の手を緩めなかったなでしこジャパンが杉田妃和や清家貴子のゴールなどでリードを広げて、完封勝利を飾ったのである。

 そんな試合でさすがの存在感を示したのが、右インサイドハーフで起用された長谷川だ。最大のハイライトはおそらく39分のシーン。相手を誘いつつひらりとかわして最後は冷静に右足で決めた場面だが、それ以外にも華麗な足技、絶妙なポジショニングで観衆を魅了した。

 この試合の長谷川に限れば、欠点を探すほうが難しい。後半に狭いスペースに決定的なパスを通したプレーといい、後半アディショナルタイムでのエリア内での個人技といい、それを観ながら思わず「うまっ」と呟いた視聴者は多数いたはずだ。
 
 足もとのテクニックだけでなく、予測、状況判断の全てがハイレベルで、だからこそ簡単に相手の急所を突けるのだろう。パスをもらう前から、2手、3手先のことを考えている、アルゼンチン戦のプレーからはそうしたインテリジェンスも感じられた。

 なでしこジャパンの現メンバーの中では別次元の上手さ。もちろん世界を見渡せば上にはいるが、「なでしこジャパン」という括りではそう評価していいだろう。

 確かな貫禄を備えた長谷川のようなプレーヤーがいると、チームメイトは大きな刺激をもらえるはず。このレベルに追いつくためにはどうすればいいか、あの局面であの選択をしたのはなぜか。そうした質問を長谷川にぶつけ、答をもらって成長の糧にできれば個々のレベルアップに繋がるし、チームも強化されるに違いない。  

 なでしこジャパンがさらなる進化を遂げる意味で、長谷川の存在そのものが大きい。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)


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