新指揮官の柔軟な采配。大宮Vが4発完勝。チーム創設後、初のI神戸戦勝利の舞台裏

2023年08月28日 西森彰

前半だけで3得点。後半ATにも加点

WEリーグ杯初戦で、大宮VはI神戸に4-1勝利。幸先の良いスタートを切った。(C)WE LEAGUE

 8月27日、NACK5スタジアムでWEリーグカップのグループステージ第1節2日目が行なわれ、ホームの大宮アルディージャVENTUSが、WEリーグ初代女王で昨季2位の INAC神戸レオネッサと対戦。大宮Vが4-1で勝利した。

 リーグ開幕前という開催時期もあり、前哨戦という位置づけにあるWEリーグカップ。昨季は、これを制した三菱重工浦和レッズレディースが、そのままWEリーグも制した。

 リーグカップという形式はとらなかった一昨季も、リーグとして公式のプレシーズンマッチを11チームが4試合ずつ行ない、4戦4勝で最良の成績を収めたI神戸が、リーグを制している。過去2年間の成績を振り返ると、プレトーナメント以上の関連性が見られる。

 そして、この日は両チームにとって、新指揮官が初めて采配を振るう公式戦でもあった。WEリーグ初采配の大宮V・柳井里奈監督は、現役時代にプレーしていた古巣I神戸との対戦になった。試合では「引かない、簡単に後ろに下がらない」という部分を意識しながら、チーム作りに取り組んでいる。

 大宮Vは、4-4-2の3ラインでブロックを作って試合に臨んだ。I神戸の布陣を把握するまで、ややチーム全体に硬さが見られる時間もあったが、13分、林みのりのゴールをきっかけに勢いに乗った。井上綾香、仲田歩夢もネットを揺らし、前半だけで3得点。後半アディショナルタイムにも井上がゴールを奪って4得点の圧勝だった。
 
 最終ラインでプレーした乗松瑠華は「練習からいろんなフィニッシュが見えてきている。そして、個人でのシュート練習の取り組みが、今日、成果として、ゴールという形で現われて、すごく嬉しい。(自分の働きについては)フォワードを抑えるというところは手応えがあり、個人としての仕事はできていた」と語る。

 初戦に向けて準備をしながら、守備時のスイッチの入れ方など実戦でどうなるか、不安と楽しみが交錯していた部分もあったという。そうしたなかでの大勝を喜びつつ、「前半の後半や、後半の途中、グルグルと振られる部分もありました。悪い時間帯での失点もあり、そこはもう少し早く修正しなければいけない」と反省を忘れない。

「(いろいろな意味で重要な初戦に勝って)全てにおいて『率直にやったぞ』という感じ」と振り返った柳井監督も、そこは同じ。「『修正点は勝った後にも負けた後にも必ずある。できれば勝ちながら修正していきたいよね』という話はしていた。やっぱり、修正点は今日もありますし、私自身の采配についても『申し訳なかったな』というところもありました」と口にする。

 その「申し訳なかった」という部分は、後半、攻勢に出てきた相手に合わせて、4-4-2から4-1-4-1に変化させた場面。しかし、上手くいっていないと見ると、このやり方に固執することなく、約10分間で見切りをつけて元に戻す柔軟な指揮で、チーム創設後初めてのI神戸戦勝利をもたらした。

【動画】仲田歩夢のスーパーゴールも! 大宮Vが4発完勝、I神戸戦ハイライト

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