『シティ・フットボール・グループ』の最高執行責任者に直撃!「日本はとくに重要なマーケット」「マリノスとの関係はユニーク」。理念とビジョンに加えグループ化のメリットにも言及【独占インタビュー】

2023年08月15日 加藤紀幸(ワールドサッカーダイジェスト)

ジャパンツアーの目的やテーマは?

独占インタビューに快く応じてくださった『シティ・フットボール・グループ』COOのロエル・デ・フリース氏。(C)SOCCER DIGEST

 マンチェスター・シティをはじめ、ニューヨーク・シティや横浜F・マリノスなど、世界各国13のフットボールクラブを傘下に収める『シティ・フットボール・グループ』で、最高執行責任者(COO)を務めるロエル・デ・フリース氏のインタビューだ。
『シティ・フットボール・グループ』のメンバーであるすべてのクラブ事業において運営や調整という重役を担い、マンチェスター・Cが横浜F・マリノス、バイエルンと対戦した7月下旬のジャパンツアーも手掛けた敏腕に、『シティ・フットボール・グループ』の理念やビジョンなどを訊いた。
 
――◆――◆――
 
――まずは、『シティ・フットボール・グループ』におけるロエルさんの立場、担っている主な業務内容を教えていただけますか?
 
 私はグループのチーフ・オペレーティング・オフィサー、つまりすべてのフットボールクラブの責任を負っています。各クラブのCOOから送られてくるレポーティングは、私が管理しています。マンチェスター・シティでも中心的な役割を担っており、簡単に説明しますと、フットボールのテクニカルな面以外は全部やっています。
 
――(7月に実施した)マンチェスター・シティの日本ツアーも、準備の段階から携わってきたのでしょうか?
 
 その通りです。
 
――日本ツアーの目的、テーマはどういったところにあるのでしょうか?
 
 フットボールという世界のマーケットにおいて、ファンベースを延ばしていくことが大きな目的のひとつ。アジアは我々にとって非常に重要なマーケットです。実際、2年1回、あるいは3年に1回くらいのペースでアジア諸国のツアーを組むようにしています。とくに日本は、重要なマーケットと位置付けています。これはファンの数というだけでなく、我々のパートナーである大企業、『日産』ですとか『アサヒビール』ですとか、『ソニー』といった会社がたくさんあるのも理由のひとつです。

 そしてもうひとつ、日本には我々のクラブがあります。ご存じの通り、横浜F・マリノスです。実際、2~3年に1回の頻度ですが、マンチェスター・シティはマリノスと試合を行なっています。
 
――『シティ・フットボール・グループ』の理念は、どういったものでしょうか?

 もっとも高いレベルで言いますと、人々のフットボールに対する愛情、そして熱というものを高めていくことです。これはとても重要で、すべてのベースに繋がる部分だと考えています。フットボールクラブはいまや、国であったり都市であったり、県や州、あるいはさまざまなコミュニティーにとって、アイデンティティーを表現するための重要なコンテンツとなっており、それゆえ大きな可能性を秘めています。人々のフットボール愛が高まり、それによってファンの数が増えれば、確実にビジネスの可能性も広がります。

 ビジネスの視点で言いますと、我々が目指しているのは世界のベストなスポーツエンターテインメントカンパニーになること。ですから我々は、スポーツとエンターテイメントにフォーカスしています。フットボールそのもののクオリティーはもちろん重要ですが、それに加えてピッチ外においても最高のエンターテインメント、最高のコンテンツを提供することで、ファンにより素晴らしい体験をしていただきたい。スポーツをひとつのフックにして、そういうビジネスを展開していくことが大きな目的です。
 
――『シティ・フットボール・グループ』のように、フットボールクラブをグループ化して相乗効果を高めているケースは、世界を見渡してもまだ多くはありません。グループ化することの強み、狙いなどを教えてください。
 
 私は以前、日産自動車に勤めていました。いろんな知識や専門性というものを長年に渡って蓄積していき、そういった知見を他のマーケットや他の分野でも活用することで、新しいビジネスを構築していく。こうした手法は、ビジネスではよくあることです。自動車産業で言えば、エンジニアリングの能力、マーケティングや製造の能力、デザインや設計の能力などです。これらをシェアすることで組織全体が効率化され、可能性も広がり、さらなる発展に繋がっていく。フットボールの世界ではユニークな手法かもしれませんが、原則としては一緒だと思っています。

 フットボールの世界で置き換えるなら、コーチングや栄養学、スポーツサイエンス、スポーツマーケティング、人材育成です。こうした分野において我々は、多くの知識を持っています。これらを活用すれば、多くのフットボールクラブをより良いものにし、またマーケットにおいても競争力を高めていくことができると考えています。

 もうひとつグループ化するメリットは、トップレベルの人材――選手、指導者、スタッフまで――を惹きつけられる点にあると考えます。『シティ・フットボール・グループ』に入れば、それが日本であっても、フランスであっても、英国であっても、シェアされた有益な知識や技能を得られるわけですからね。こうした魅力を提供できれば、素晴らしい人材を世界中から引きつけられます。企業と一緒です。グローバルなクラブに入れば、キャリアにおけるチャンスや選択肢は確実に広がります。

次ページキーワードは「ポゼッション」や「攻撃性」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事