現地紙コラムニストが綴る――武藤嘉紀のブンデス挑戦記「キャンプ地で前半戦の激闘を振り返る」

2016年01月21日 ラインハルト・レーベルク

「もっと得点もアシストもできた」

瞬く間にブンデスリーガの水に馴染んだだけでなく、武藤はドイツの言葉や風土に対しても高い順応性を見せた。(C)Getty Images

 マインツの冬のキャンプ地、スペインのコスタ・デル・ソル沿いの町マルベラで、武藤嘉紀が初めての海外生活や、ブンデスリーガでの6か月間について語ってくれた。
 
 練習施設のマルベラ・フットボールセンターからさほど遠くない位置にある高級ホテル。待ち合わせ場所はそのロビーだ。満面の笑みで迎えてくれた武藤は、私の前でこれまでの学習成果を披露しようと、ドイツ語でホテルの従業員にこう切り出した。「3人分のテーブルを予約したいのですが……」。茶目っ気たっぷりだ。
 
 こちらがはっきりとした発音でゆっくり喋れば、もう大半の内容は理解できる。武藤も夫人も、とっくにひとりで買い物ができるようになっており、相応の努力をしたのだろう。
 
 ただ、マインツではまだ良い日本食のレストランが見つかっていないらしい。38キロ離れたフランクフルトまで行き、アイントラハト・フランクフルトでプレーする長谷部誠と会食する機会が多いという。
 
 新しい文化に慣れるまでに、最初は「すごくすごく大変だった」と振り返る。「生活、言葉、いろいろな習慣」などすべてがだ。
 
「でもたくさんのひとたちに助けてもらった」と感謝を口にする。とくに通訳の高山氏との信頼関係は厚く、生活面でも全面サポートを受けているようだ。一方で武藤は、ブンデスリーガのサッカーにも早々と順応してみせた。前半戦だけで7得点を挙げており、岡崎慎司の後釜としては申し分ない結果だ。
 
「スピード、コンディション、ツヴァイカンプフ(1対1の競り合い)でのアグレッシブさ」が、Jリーグとの大きな違いだという。自身の結果については満足しておらず、「まだまだ向上できる。もっと得点もアシストもできたと思う」と話す一方で、チーム内で求められている役割については、それなりに全うできていると胸を張る。
 
 魅了されていると称えたのが、ドイツのスタジアムの雰囲気だ。ほとんどのゲームのチケットは完売で、ピッチの周りに陸上トラックがなく、観客との距離が近い。負けた後や選手個人のパフォーマンスが優れなかったときでさえ、ファンたちの盛大な応援を受けられる。「本当にパワーをもらえる」としみじみ話す。
 

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