東京五輪で敗れた時のような絶望感はない。スウェーデンに力負けも、“未来のなでしこ”に希望を与えたのではないか【女子W杯】

2023年08月11日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

清水の想いもきっと届いているはず

その悔し涙をいつか嬉し涙に。今後のなでしこジャパンに期待したい。写真:GettyImages

 女子ワールドカップの準々決勝、怒涛の反撃も及ばず、スウェーデンに1−2と敗戦。なでしこジャパンはベスト8という結果に終わった。

 植木のPKや藤野のFKがバーに当たる不運はあったものの、力負けと捉える見方もできる。何より残念だったのは、2失点ともセットプレー絡みだった点。スウェーデンの強みのひとつであるセットプレーから1失点ならまだしも2失点したわけだから、その点で力不足の感は否めなかった。

 一方で日本は前半、強みであるはずのボランチコンビ、長谷川と長野をほぼ完璧に封じ込まれた。このふたりを消された状況での攻め手が乏しく、最初の45分間はノルウェー戦までのようなスピーディなアタックを展開できなかった。後ろからの組み立てがあまり上手くいかなかったスウェーデンがすぐさまロングボール主体に切り替えたような臨機応変さが、この日の前半の日本にはなく、戦略的にスウェーデンに及ばなかった印象さえある。

 もちろん、0−2にされてから諦めず、スウェーデンの足が止まった終盤に長谷川や遠藤を中心に攻撃を仕掛けて1点を返した点はポジティブに映った。ここまで来たら戦術云々ではなく気迫の勝負というシチュエーションで意地を見せたなでしこジャパンのスタンスは、素直に素晴らしかった。

 とはいえ、「結果が全て」という熊谷の言葉に集約されているような気がする。大会前に「何より結果にこだわりたい」「優勝を目指さないでどこを目指す」と熱く語ってくれた清水のコメントも踏まえれば、なでしこジャパンのメンバーは健闘など求めていなかったと思う。

 優勝とベスト8では当然ながら大きな差がある。その意味で、今回のなでしこジャパンは2011年のチームを超えられなかった。スウェーデンの勝利は試合の内容からして妥当だったと感じる。ただ、それでも、だ。
 
 今回のなでしこジャパンは、日本女子サッカーの未来に希望を与えたのではないか。2011年のワールドカップ優勝をテレビで見て「私もなでしこジャパンの一員になりたい」と誓った選手たちが、「今度は私たちが勇気を与える番だ」と意気込んで今大会に臨んだという。結果、ベスト8に終わったものの、ザンビア戦からスウェーデン戦までの戦いぶりが"未来のなでしこ"の闘志に火を付けたと確信している。

 「なでしこジャパンは続いていく」との池田監督の言葉とおり、ここからだ。「未来の女子サッカーのために」と懸命に戦った清水の想いもきっと届いているはずで、今後の代表チームに是非とも期待したい。少なくとも、東京五輪で同じスウェーデンに敗れた時のような絶望感はない。スウェーデン戦での悔し涙が、嬉し涙に変わる瞬間がいずれ訪れてくれることを願う。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)


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