【移籍専門記者のマル秘情報】争奪戦が激化する逸材A・ゴメス。代理人メンデスの手引きでモウリーニョの監督就任が確実なユナイテッドへ?

2016年01月19日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

バレンシアとメンデスは利害が完全に一致している。

バレンシア移籍後の1年半で株価が急上昇しているA・ゴメス。この冬に動かなければ、夏には高額なオークションが必至だ。(C)Rafa HUERTA

 バレンシアのアンドレ・ゴメスは、今シーズンのヨーロッパで最も活躍している若手MFのひとりだ。彼を良く知る者はそのプレーを「甘い音楽」、「純粋なメロディ」と評する。
 
 アイドルはジネディーヌ・ジダンとマヌエル・ルイ・コスタ。すでに16歳にして、ポルトの育成部門で特別な輝きを放っていた。にもかかわらず、ポルトはなぜかプロ契約を交わすことなく手放した。その3年後にライバルのベンフィカと契約したA・ゴメスは、同僚パブロ・アイマールから多くを盗み取り、メキメキと頭角を現わした。
 
 国際舞台での評価を確立したのは、2014年夏に移籍したバレンシアでのパフォーマンス。テクニックとファンタジア、走力と戦術センスを合わせ持ち、攻守両局面でチームを支える万能のMFは、今や移籍マーケットで最も大きな注目を集める目玉商品のひとりとなった。
 
 例えばナポリは、本腰を入れて獲得に乗り出している。しかし、クリスティアーノ・ジュントリSDが積極的な姿勢を見せたにもかかわらず、ファーストコンタクトはあまり良い感触とは言えなかった。
 
 それには理由がある。代理人が超大物、ジョルジュ・メンデスだからだ。バレンシアにシンガポール人の現オーナー、ピーター・リムを送り込んだ張本人であり、コンサルタントとしてクラブの補強・強化の実権を握っている"影のフィクサー"である。
 
 しかも、ベンフィカからバレンシアにゴメスを移籍させた時に、次回移籍時の売却益から小さくないパーセンテージを取るという契約も結んでいる。バレンシアとメンデスは、「A・ゴメスをできる限り高値で売却する」という点で利害が完全に一致しているわけだ。
 
 実際、すでに2015年夏にバレンシアはパリSGから届いた4600万ユーロ(約64億円)というビッグオファーを無下に断り、その直後にA・ゴメスとの契約を延長して違約金を8000万ユーロ(約112億円)まで引き上げた。もちろんナポリには、そんな移籍金を用意する資金力はない。獲得は夢のままで終わるだろう。
 
 ここにきて有力になっているのは、同じくメンデスが代理人を務めるジョゼ・モウリーニョの監督就任が確実なマンチェスター・ユナイテッドに、2016年夏に送り込むというシナリオだ。

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 ただ、今冬のうちにアトレティコ・マドリーに移籍する可能性も消えていない。FIFAから未成年選手の移籍規定違反に対する処分(1年間の移籍オペレーション禁止)を受ける前に、先手を打って来シーズンに向けた補強を済ませてしまおうという目論見があるからだ。

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 前述したナポリに加えてユベントスも興味を示しているが、競合は激しく移籍金は吊り上がる一方。この冬に動かなければ、夏にはビッグクラブによる熾烈なオークションが始まるだろう。そうなればユナイテッドをはじめ、資金力豊富なプレミアリーグ勢が有利だ。そしてそのオークションを仕切るのは、いずれにしてもメンデスだ。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※当コラムではディ・マルツィオ氏のオフィシャルサイトにも掲載されていない『サッカーダイジェストWEB』だけの独占記事をお届けします。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かしてカルチョの世界に広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。セリエAから下部リーグまで各クラブの会長やスポーツディレクターはもちろん、代理人からスカウトまで膨大な関係者と緊密なネットワークを持ち、しかもしっかり裏が取れるまでは決して情報を出さない。発信するニュースはすべて彼自身のプライドがかかったガチネタであり、ハズレはほぼ皆無と言っても過言ではない。
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