「え? この私がマジで?」なぜ女帝ラピノーはPK失敗直後に笑みを浮かべていたのか「悪趣味なジョークだわ」

2023年08月07日 サッカーダイジェストWeb編集部

202キャップ目のスウェーデン戦が代表ラストゲームに

17年間の代表キャリアに幕をおろしたラピノー。母国アメリカに4つの“金メダル”をもたらした。(C)Getty Images

 破天荒なスーパースターは最後まで"らしい"振る舞いで檜舞台から去っていった。

 現地8月6日、オーストラリア&ニュージーランド共催の女子ワールドカップはラウンド・オブ16の2試合が行なわれ、大会3連覇を狙う女王アメリカはスウェーデンと対戦した。両者決め手を欠いて延長戦にまでもつれ込んだが、スコアは0-0のまま動かない。サドンデスに突入したPK戦をスウェーデンが5-4で制し、激闘にピリオドを打った。
【PHOTO】スウェーデン戦でPKを外して、笑みを浮かべるラピノー

 長く黄金期を謳歌してきたアメリカ女子代表チームにとっては、大きな転換点となりそうな敗戦だ。

 東京五輪で銅メダルに輝くも、今大会では過去8回のワールドカップで初めて「ベスト4」にたどり着けなかった。4試合4得点と得点力不足が顕著だったが、やはりチームとして過渡期にあるとの指摘が目につく。FWモーガン、MFアーツ、DFダン、GKナイアーなど躍進を支えてきた主軸が軒並み30代半ばにさしかかり、彼女たちに取って代わるワールドクラスのスターが育っていないのも、今後に向けた明らかな改善ポイントだろう。

 そんななか、同じく一時代を築いた重鎮が代表ユニホームに別れを告げた。38歳のMFメーガン・ラピノーだ。17年間に及んだ代表キャリアでワールドカップ優勝2回、五輪優勝2回を誇り、2019年には女子バロンドールとFIFA最優秀女子プレーヤー賞の2冠に輝いた。2023年シーズンいっぱいでの現役引退を表明しており、202キャップ目(63得点)となったこの日のスウェーデン戦が代表ラストマッチとなったのだ。

 延長戦の99分に盟友モーガンに代わってピッチに登場。エネルギッシュに中盤を疾駆したがチームに決勝ゴールをもたらせなかった。そして迎えたPK戦。ラピノーは4番手を任されたが、無情にもショットをゴール右に外してしまう。

 少しうつむいたあと、満面の笑みを浮かべてチームの輪に戻ったラピノー。試合後のインタビューでは涙で赤く腫らした目を気にしながら、陽気にその理由を明かしてくれた。

「まったく、悪趣味なジョークよね、って思った。え? マジで私があそこでPKをミスしちゃうの? って感じ。笑うしかなかったのよ。最後にPKを外したのがいつだったかを思い出せない。ずいぶん長い間外してなかったから…。でもそういうものなのよね。可能性は常に誰だってあるし、自分にも起こり得ると思ってはいた。ただあそこで来るとはねぇ。みんなも決めると思っていたでしょ?」

 米メディア『ESPN』は「ラピノーが最後に外したのは2018年で、NSWL(米女子リーグ)のゲーム。彼女に確認したらようやく思い出していた」と補足している。
 
 そしてラピノーは静かに代表でのキャリアを振り返った。熱い想いが込み上げ、何度か声を詰まらせながら言葉を紡いだ。

「数え切れないくらいの栄光に彩られたチームで、こんなに長くプレーできて、この世代の一員であったことを本当に誇りに思うし、幸福と感謝の気持ちでいっぱい。もう代表ゲームに出れなくなるのは寂しいし辛いだろうけど、ずっと心の準備をしてきたから大丈夫。私はキャリアのすべてを愛している。信じられないくらい素晴らしい日々だった」

 最後には涙を拭い、「それにしても最後の最後で私がPKを外すなんて、まったくダークなユーモアだわ」と言って周囲を笑わせた。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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