紙一重のファイナル!堅守速攻の明秀日立とサイド攻撃で主導権を握った桐光学園、まさにハイレベルな激闘【総体】

2023年08月05日 安藤隆人

PK戦も含めて一進一退

明秀日立は吉田(7番)を起点に2点を先制した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 真夏の決戦のファイナルにふさわしい戦いだった。
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 7日間で5、6試合というハードスケジュールだったが、開催地が北海道の旭川だったというのもあり、猛暑に見舞われたのは2日間だけだった。それ以外は風もあり、比較的気温が抑えられた状態での大会だったので、決勝戦のクオリティは非常に高かった。

 結果は明秀日立がPK戦の末に桐光学園を退けて、初の全国優勝を果たしたが、90分にわたる激戦は、PK戦も含めてまさに一進一退でハイレベルな激闘であった。それを伝えたいと、このコラムを書いている。

 立ち上がりから持ち味を発揮したのは明秀日立だった。益子峻輔、熊﨑瑛太、柴田健成の前線の3枚が前線からハイプレスを仕掛けると、トップ下の石橋鞘、吉田裕哉と大原大和のダブルボランチが前向きに飛び出して、奪ってからのショートカウンターを見せる。

 11分に吉田のくさびのパスを受けた石橋が右サイドで相手DFを抑えながらボールキープすると、オーバーラップしてきた右サイドバックの長谷川幸蔵に預ける。長谷川はそのままドリブルでペナルティーエリア内をえぐって、マイナスのクロスを送ると、ニアに走り込んだ柴田がスライディングで流し込んだ。

 先制してさらに攻勢を強めた明秀日立は、吉田の正確なパスを起点に、ショートパスとダイレクトパスを駆使して、桐光学園の守備を翻弄。14分には吉田を起点にショートパスを繋いで鮮やかに中央を突破し、抜け出した柴田がGKとの1対1を冷静に制して、追加点。流れは完全に明秀日立に傾いていた。
 
 しかし、ここから桐光学園が目を覚ました。前日の準決勝・国見戦で右すねを打撲して交代した齋藤俊輔に代わって左サイドに投入された吉田晃大が積極的な縦への突破を見せるようになると、今大会絶好調の宮下拓弥が前線で身体を張ってボールを収め、相手の前へのベクトルを折りに行った。

 32分、その宮下が結果を出す。FKをMF松田悠世がゴール前に蹴り込むと、高い打点のヘッドで合わせ、ゴール右隅に押し込んだ。

 反撃の狼煙を上げる一撃。後半は桐光学園の容赦ない猛攻が始まった。鈴木勝大監督が後半の頭からトップ下の丸茂晴翔に代えて齋藤を投入。齋藤と松田という全国トップレベルのドリブラーを両サイドに配置するいつもの形に戻すと、彼らが爆発的なドリブルを披露した。

 そして後半16分、このコンビが魅せた。左サイドでボールを受けた齋藤が一気に縦に仕掛けると、左のハーフスペースに松田が潜り込む。齋藤のスルーパスを受けた松田は、そのまま縦に仕掛けて得意の左足一閃。ボールはゴール右サイドネットに突き刺さった。
 

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