【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の五十三「ジダン新監督のキーワード、“Actitud”の神髄とは?」

2016年01月14日 小宮良之

現役時代は脇目を振らず、自らの仕事をやり遂げた。

1月9日のデポルティボ戦でトップリーグにおける監督デビューを飾ったジダン。現役時代と同じく凛とした表情とエレガントな立ち振る舞いで独特のオーラを放っていた。(C)Getty Images

「今日の試合で一番気に入ったのは、選手たちのActitudだ」
 
 1月9日、監督としてのトップリーグ・デビューを飾ったジネディーヌ・ジダンは、試合後の記者会見でそう語っている。レアル・マドリーは5-0という華々しいスコアでデポルティボを粉砕したわけだが、その感想がいかにもジダンらしい。
 
「Actitud」とは、スペイン語で姿勢、振る舞いを意味する。
 
 現役時代のジダンは世界最高の選手だったが、決して驕り高ぶることはなかった。ひたすら、プレーすることに集中し、没頭した。脇目を振らず、自らの仕事をやり遂げた。
 
 しかし、仕事をしている、という倦怠感を見せたことはなかった。粛々とピッチに立ち続ける。誰よりも自らを律していた。にもかかわらず、プレーそのものは一流バレリーナのように優雅だった。
 
 ジダンが得意とした有名な技巧に「マルセイユ・ルーレット」がある。マルセイユはジダンの出身地だ。相手と向かい合い、片方の足でボールを引き、くるりと身体を反転させながら、もう一方の足でボールを後ろに引いて前に出るというドリブルプレーの一つ。ボールの動きがルーレット盤で弾かれる球体の動きに似ているところに、その技の名の由来がある。
 
 しかし、彼のプレーを動かしていたのは「Actitud」だった。その行動規範こそが、ジダンの土台だったと言える。

次ページマドリーを伝統の「剛直なクラブ」に戻すのに最適な人材か。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事