【高校選手権】中京大中京を"影"で支えた主将。石川将が示したキャプテンシー

2016年01月07日 森田将義

出場可能な時間は、わずか10分。星稜戦で同点ゴールを狙ったが…。

左ハムストリングを痛めた石川将は、1、2回戦の出場を回避。3回戦・星稜戦の後半30分に途中出場したが、ゴールは挙げられなかった。 写真:浦 正弘

 いるはずだった男がいない。「チームにならなくてはならない存在」(岡山哲也監督)である中京大中京の主将MF石川将暉は、初戦・初芝橋本戦の80分間をベンチに座ったまま過ごした。
 
 地区予選で貴重なゴールを連発し、選手権出場の立役者となった石川将だが、12月上旬に左足ハムストリングを負傷。一時は回復に向かったものの、大会直前の合宿で再発し、スタメンから外れた。トレーナーから提示された出場可能な時間は、わずか10分のみ。初芝橋本戦は後半に得点を重ねて4-0で終わったため、無理はせずピッチに立つことはなかった。
 
 プレーで貢献できなかったものの、ピッチ外での彼の貢献は大きかった。高校生活最後の晴れ舞台に気持ちが昂る3年生には、「ずっと一緒にやってきた仲間なので、なにも言わなくても通じる。ああしろ、こうしろと言うのではなく、『いつも通りやれよ』とだけ言葉をかけた」。
 
 一方、石川将の負傷によって出番が回ってきた1年生のMF井村早良とFW本山遊大には、「チームのためにではなく、個人として目立ってこい」。石川将は「特に早良は僕が怪我したことで、『将暉くんのために頑張る』と言ってくれた。もちろん、嬉しい気持ちはあるけど、僕だけのチームではないし、部員83人全員がいてひとつのチーム。チームのことは3年生に任せて、自分のことだけを考えて欲しかった」と話す。
 
「緊張していたタイミングで声をかけてもらえたので、気が楽になった」と本山が振り返ったように、頼れる主将に背を押されたふたりは初戦から大活躍。井村がチームの2点目を奪い、本山も2アシストを記録した。
 
 続く2回戦の札幌大谷戦でも1ゴールずつを奪い勝利に貢献。もちろん、ふたりだけではなく、いつも通り粘り強さが売りの中京大中京らしさを体現した3年生の活躍も見事だった。初戦に続き、快勝で終わったため、2回戦も石川将はピッチに立たなかったが、"影のアシスト"がチームの勝利を後押ししたのは間違いない。
 
 迎えた3回戦で対戦したのは、前年王者の星稜だった。後半立ち上がりに失点し、中京大中京は追いかける展開を強いられた。残り10分となり、岡山監督から声をかけられたのは石川将。念願だった選手権のピッチに立つと懸命に同点ゴールを狙ったが、想いは届かずタイムアップを迎えた。
 
 目標に掲げた日本一には届かず。思うようにプレーできなかった石川将にとって悔いが残る大会だったかもしれない。だが、石川将を中心に選手全員が必死に選手権と向き合った中京大中京の姿は見る人の心を打つモノだった。


取材・文:森田将義
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