パリSGやユーベが基準オーバー。この夏にファイナンシャル・フェアプレーの影響を最も受ける8クラブとは?

2023年07月01日 片野道郎

UEFAと結んだ和解協定の内容とは?

スカッドコスト削減が必要なユーベは、高額年俸選手であるディ・マリア(写真)との契約延長を断念。ディ・マリアはベンフィカ移籍が濃厚と伝えられている。(C)Getty Images

 UEFAが2011年に導入したファイナンシャル・フェアプレー(FFP)は、クラブに経営の健全化を促すため、独自の会計基準に基づいて一定以上の損失(赤字)を計上した場合、罰金、移籍オペレーションの制限、欧州カップ出場権剥奪などの罰則を適用する仕組みだ。
 
 20年から足かけ3シーズンにわたって続いたコロナ禍がもたらした収益減に対応するため、ここ2年間は基準が緩和されているが、それでも22年度にはパリSG、モナコ、マルセイユ、ユベントス、インテル、ローマ、ベシクタシュの8クラブが基準をクリアできず、UEFAと和解協定を結ぶことになった。
 
 その内容は、3~4年以内に赤字解消、移籍収支の黒字化、スカッドコスト(人件費+減価償却費)の削減などの基準をクリアすれば、本来なら受けるべき欧州カップ出場権剥奪などの罰則を猶予/免除されるというもの。したがって8クラブは今夏の移籍マーケットでも、上に見た基準に適合しない形での補強を行なうことはできない。

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 UEFAは昨年、従来のFFPルールを大幅に見直したファイナンシャル・サステナビリティ・レギュレーション(FSR)を22-23シーズン以降に適用することを発表しているが、前記の和解協定の内容もそれに沿ったものだ。
 
 クラブの強化戦略に直接的な影響を及ぼすのは、移籍収支の黒字化とスカッドコスト削減(3年後に売上高の70%以内)の2つ。例えばユベントスは昨シーズンの決算で売上高(4億4300万ユーロ)に対するスカッドコスト(4億9800万ユーロ)の割合が112%にも達している。
 
 これを削減するためには高年俸選手の放出と新戦力獲得の抑制が不可欠だ。アンヘル・ディ・マリアら高年俸選手の契約延長見送り、フェデリコ・キエーザやドゥシャン・ヴラホビッチの放出などが予想されるのもそれゆえ。同じことがパリSGやインテル、ローマにも当てはまる。
 
文●片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2023年6月15日号より加筆・転載
 
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