J2昇格に邁進する岐阜。指揮官・上野優作が語る「若手の成長」と「ベテランの価値」

2023年06月29日 元川悦子

選手一人ひとりの成長が一大テーマ

今季から岐阜で指揮を執る上野監督。現役時代は福岡や広島、新潟などで活躍した元FWだ。(C)Kaz Photography/FC GIFU

 2026年の北中米ワールドカップ(W杯)に向け、3月から本格始動した第二次森保ジャパン。3月のウルグアイ&コロンビアとの2連戦こそ未勝利に終わったが、6月のエルサルバドル&ペルーとの2連戦は、合計10ゴールを挙げる華々しい連勝。チーム全体の士気が高まっている。

 その傍らで、2022年カタールW杯まで代表に携わった面々も、新たな環境で奮闘している。森保一監督のもとでコーチとして2年間働いたFC岐阜・上野優作監督もその1人。W杯のあと、J3の指揮官として再出発を切ったのだ。

「岐阜の監督就任は、僕が浦和レッズでコーチをしていた際、一緒に仕事をしていた山道(守彦)スポーツダイレクターの存在が大きかったと思います。Jリーグ監督未経験の人間が指揮官就任のチャンスをもらえるというのは滅多にないこと。有難く引き受けさせていただきました」と彼は言う。

 1月のチーム始動時には、選手一人ひとりの成長を一大テーマに掲げたという。

「具体的に言うと、状況を的確に判断してプレー選択できる選手になってほしいと。そこが一番です。攻撃時にはボールを保持しながら機を見てゴールを突いていく、守備時はファーストディフェンダーからしっかりプレスをかけて守りの組織を構築していくという基本ですね。そこから入りました」

 そのうえで2か月のプレシーズンを経て、3月の開幕を迎えた。序盤5戦は2勝2分1敗とそこまで悪くなかったが、4~5月にかけて4連敗。一時は18位に沈む苦境を味わった。

「開幕直後はある程度、狙い通りにできていたんですけど、トレーニングの負荷の大きさや怪我人が重なって4連敗してしまった。得点も思うように取れず、苦しみましたね」
 
 この時点の総得点はわずかに9。現役時代は大型FWとしてアビスパ福岡や京都サンガF.C.、アルビレックス新潟などで活躍し、第一次森保ジャパン時代も攻撃担当コーチだった指揮官にしてみれば、この状況に納得いくはずがない。改善策を見出そうと懸命に取り組んだ。

「もちろんシュートトレーニングもやりましたけど、我々が大事にしているのは、ビルドアップ、中盤の攻撃、最後の崩しの3段階。そのうちのどこが上手く行っていないかを突き詰めました。

 相手陣内に人数をかけてゴール前に侵入しているか、スルーパスを供給してGKとの1対1を作っているか、中盤の崩しでは正しい立ち位置を取れているか、自分たちが狙っていた形でボールが動いているか...といったディテールをしっかりと見極めなければ、抜本的な改善にはつながらない。それを続けた結果、少しずつ結果が出るようになってきました」

 その言葉通り、5月14日のカマタマーレ讃岐戦から、6月24日の福島ユナイテッドFC戦までは6試合無敗と完全復調。15節終了時点では5位とJ2昇格圏内を捉えつつある。

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