【指揮官コラム】特別編 三浦泰年の『情熱地泰』|“下手だから走る”しかないのか?

2016年01月04日 サッカーダイジェスト編集部

点を取る、取らせないために「走る」のは当たり前。

昨年はタイで、今年は富山で新たなスタートを切ることになる。信念に基づいた良いサッカーを追求したい。(C) SOCCER DIGEST

 年が明け、2016年になった。
 
 天皇杯はガンバ大阪の優勝で日本サッカー界はスタート。 高校サッカー選手権は熱戦が繰り広げられている。
 
 サッカー界は休むことなく常に動いているが、僕も今シーズンから新天地となる「カターレ富山」で監督を務める。
 
 正月早々、少しネガティヴな議論になってしまうかもしれないが、たまに聞く表現がフッと氣になった。
 それは「我々は相手より下手だから走るしかない」といったもの。
 
 こうした考え方は現代のサッカーにおいて合理的なものなのか? そこに少しメスを入れてみたい。
 
「我々は下手なんだ。だから上手いチームより多く走るトレーニングやフィジカルトレーニングをして勝利を掴み取る」
 
 こんな実況を最近ではJリーグで一度、高校サッカー選手権で一度耳にした。精神論が好きな日本人が聞けば「おっ凄いな」と美談となるような感じの話だ。果たして、こうした実況をヨーロッパや南米では聞けるのだろうか?
 
 いや、百歩譲って選手をマネージメントする上での方法論にはなるかもしれないが、周りに発信することなのか疑問である。
 
 アマチュア、プロフェッショナルと分けるなら、こうした考えはプロにはあまりそぐわない。
 
 しかし、相手より下手というのを前提に良いサッカーを諦めることを否定するのが理想論なのだとすれば、この理想論は、現実をしっかり受け止めた確固たる戦略となるのであろう……。
 
 というのも、相手よりスコア(点)を取る、取らせない為に「走る」のは当たり前だからだ。
 
 そしてその「走る」は、フィジカルトレーニング(陸上部のトレーニング)として走るのか、サッカー(ボールを使ったトレーニング)のなかで身につけるのか?
 
 相手より試合で走るために何をトレーニングするか? サッカーの監督であれば陸上トレーニングで体力とメンタルを強化するのではなく、サッカーのトレーニングでアップさせていくのが仕事だ。
 
 テクニカルでエレガントなチームが、後半残り20分から動きが落ちるのは決してテクニカルでもエレガントでもないということにつながる。
 
 テクニカルでエレガントに、なおかつコレクティブにサッカーが出来れば疲れないはずだ。
 

次ページ“信念”を持って良いサッカーを。

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