【天皇杯/編集長の視点】G大阪2-1浦和|老獪なゲーム運びを可能にした司令塔・遠藤。守備陣に呼吸を整えさせる意味でも、“そのベテランの業”は効いていた

2016年01月01日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

G大阪にとってラッキーだったのは、浦和の司令塔・柏木の負傷欠場。

中に的を絞った守備で浦和の攻撃を防いだG大阪。その戦い方は結果的にハマッていた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 G大阪にしてみれば、してやったりの勝利だろう。

 やや押し込まれる展開ながらも、32分にカウンターからパトリックの技ありゴールでまんまと先制。その4分後に一旦は追いつかれたが、53分には「練習では一度も決まらなかった」(丹羽)遠藤のCK→パトリックのシュートで、勝ち越し弾を叩き込む。試合を支配したわけではないものの、老獪な試合運びで天皇杯連覇を成し遂げたG大阪の戦いぶりは評価に値した。

 あくまで主観だが、G大阪の勝因は大きく分けて3つある。

 そのひとつは、浦和に流れがグッと傾きかけた前半の10~14分の時間帯に失点しなかった点だ。12分に右SBの米倉が負傷交代するアクシデントにも動じず、ボランチの今野を右SBにコンバート。若手の井手口を遠藤の相棒にし、改めて守備ブロックを整えてピンチを凌いだ。

 ここで仮に失点していたら、カウンター主体だったG大阪は戦い方を変えざるを得なかったかもしれない。その意味で、急きょ任された右SBをそつなくこなした今野、長谷川監督曰く「時間とともに落ち着いた」井手口の貢献は見逃せなかった。

 ふたつ目の勝因は、その守備陣が自陣のバイタルエリアで危険な縦パスをほとんど入れさせなかった点だ。CBの丹羽が「浦和と戦う時は中をしっかり締めて、外では回させる」と言うように、中央を固めるディフェンスで攻撃を撥ね返していた。

 G大阪にとってラッキーだったのは、浦和の柏木の負傷欠場だ。事実、この司令塔を欠いた浦和は、中盤でリズムが作れなかった。青木と阿部の2ボランチから2シャドーの李と武藤になかなか効果的な縦パスが入らず、流れるような中央突破は影を潜めた。

 サイドから圧力をかけて崩す浦和の意図は分かったが、それこそG大阪の思う壺だったかもしれない。実際、浦和に押し込まれたラスト5分を除けば、G大阪の守備網は組織的にまとまっていて、崩れる気配はほとんどなかった。

 守備の局面では、倉田の献身も見逃せなかった。2-1とリードしてからG大阪は4-2-3-1から4-4-2に変えて、左サイドハーフの宇佐美をFW、トップ下の倉田を左サイドハーフに回したのだが、長谷川監督のこの采配が的中。絶妙なプレスバックでピンチの芽を摘んだ倉田の働きは、DF陣の足が少し止まってきた終盤の時間帯でとりわけ光った。

 GKの東口がファインセーブを連発できた背景にも、フィールドプレーヤーの身体を張ったディフェンスがあった。「最後の壁になる」という想いで守っていた丹羽を筆頭に、守備陣がシュートコースを上手く限定、もしくは浦和のアタッカーに身体を預けて良い体勢でシュートを打たせなかったから、1失点で抑えられたとの見方もできる。いずれにせよ、サイドである程度やられても、中央のエリアではやられないG大阪の"割り切った守備"は、明らかにハマっていた。
 

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