「昌平はラヴィーダだけじゃないんだ」スタメンで唯一違う前所属。MF大谷湊斗の意地と覚悟

2023年06月16日 安藤隆人

インハイ準決勝で涙を飲む

昌平の2年生MF大谷。テクニックと俊敏性を持つ。写真:安藤隆人

 インターハイ埼玉県予選準決勝、優勝候補の筆頭として見られていた昌平が、名門校の浦和南に、2-2で突入したPK戦の末に敗れた。

「セットプレーにやられました。前半でもっと点をとって勝負を決めないといけなかった。責任を感じます」

 試合後、卓越したテクニックと俊敏性を持つ昌平の2年生MF大谷湊斗はこう唇を噛んだ。

 この試合、両チーム通じて一番躍動をしていたのは大谷だった。トップ下の位置からファーストタッチで相手を剥がし、さらにカバーに来たDFの逆を突くプレーを見せた。

 16分には左サイドバックの田尻優海からのクサビのパスを受けると、鮮やかなファーストタッチでターン。ドリブルでペナルティエリアまで迫り、中に行くと見せかけてボックス内左のスペースに走り込んだMF土谷飛雅へ、ノールックのスルーパスを通した。土谷がそのまま仕掛けて中央に折り返したボールを、FW小田晄平が頭で合わせて先制点が生まれた。

 21分にも大谷がドリブルで切り込んで、DFを十分に引き付けてからMF前田大樹にスルーパス。前田がフリーでシュートを放つが、これはバーを直撃した。39分にも大谷と10番のMF長準喜のコンビネーションで浦和南の守備陣を翻弄。前半は大谷を軸に完全にペースを握った。

 後半、前半で仕留め切れなかったのが影響し、2本のセットプレーから逆転を許した。それでも74分に大谷は、カウンターから長準喜のスルーパスに抜け出して、GKと1対1に。シュートはGKのセーブに遭ったが、後半終了間際の80分には右からのクロスに対し、ファーサイドに潜り込んで渾身のダイビングヘッド。劇的な同点弾をマークした。
 
 しかし、勝負は冒頭で記した通り、2-2のままPK戦にもつれ込み、キッカー2人のシュートを止められた昌平が涙を飲む形となった。

「チームを勝たせたいという気持ちは人一倍強いし、昌平でもっと存在感を出さないといけないと思っているので、やっぱり勝ち切れなかったことが悔しいです」

 大谷には意地と覚悟があった。浦和南戦のスタメンで、昌平の下部組織にあたるFCラヴィーダ出身は10人。大谷だけが違うクラブからやってきた選手だった。

 大阪出身の大谷は中学時代、山梨にあるアメージングアカデミージュニアユースに所属。「最初は関西の強豪校に進もうと思っていた」が、そのテクニックとセンスを評価されて昌平の練習に参加をすると考えは変わった。

 入学当時は「昌平がラヴィーダとつながっていることは知っていたのですが、ここまで多くのラヴィーダ出身の選手が中心になっていることは知らなかった」と、ラヴィーダ出身の選手が高い技術と連係を見せているのに焦りを覚えた。しかし、彼はその焦りをすぐに覚悟と楽しみに変えた。

「自分が絶対に食い込んでいきたいと思いました。そのためには練習などで遠慮をしていたらもったいないので、常にラヴィーダ出身の選手や上級生とコミュニケーションを取りました。普通の練習でも『どこに動いたら良いか』や『どこに欲しいか』を積極的に聞くことをして、練習の意図を理解したり、周りのプレーを知ったりすることを意識しました」

 まずは自分から率先して動いて周りを知り、自分を知ってもらうように努めた。さらに「自分の長所を磨くだけではダメで、長所を増やすことも意識しました」と、引き出しを増やす努力も怠らなかった。
【選手権PHOTO】堀北・ガッキー・広瀬姉妹! 初代から最新18代目の凛美まで「歴代応援マネージャー」を一挙公開!

次ページ「僕には意地があります」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事